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それは偶然だったのか、それとも……

 そこに怪現象は存在しない。

 ただ不思議だったのは、その日は朝から土砂降りの雨だったのに、お焚き上げの時間だけは雨がやみ、お焚き上げが終わった瞬間にまたスコールのような雨がドサッと降り、黙祷を終えるとまたピタッとやんで、雲間から太陽が顔を覗かせたことだ。

その日は朝から土砂降りだった ©松原タニシ
さっきまでの雨が嘘のよう ©松原タニシ

 ただの偶然のタイミングといえばそれまでなのだが、その瞬間その場にいたお焚き上げの参加者全員が、そのあと皆晴れやかな表情で解散していったのは事実である。

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 それは希望だった。「死」と向き合うことが希望なんだと気づかされた。

「死」を知るための旅に出る

 人間がもっとも恐れるものとは何か。それは「死」。現実から目を背けたくなるのは、その延長線上に「死」が存在するからだ。「死」を片時でも忘れさせてくれるものが人間としての娯楽となる。しかし、背けているだけでは永遠に「死」の恐怖からは逃れられない。

 だから向き合う。「死」をもっと知る。

お焚き上げの様子 ©松原タニシ

 人が亡くなった後の場所に住んでいるだけの僕は、そこで亡くなった人自体を知らない。その人がどうやって生きてきて、何を思って亡くなったかを知らない。亡くなってからどうなったかを知らない。その遺族がどう思ったかを知らない。どう今を生きているのかを知らない。

 僕にとって「死」はまだまだ知らないことだらけだった。

 そうして僕はまず沖縄へ向かった。