「失敗の責任をすべて押しつけられた」「とうてい達成不可能な、とんでもない目標を課された」「不祥事を隠蔽するよう迫られた」。

 仕事をしていると誰もが「本当にヤバい場面」に直面することがあるかもしれません。そんな危機に、どう対処すればいいのか。経営共創基盤(IGPI)共同経営者 マネージングディレクター・木村尚敬氏による『修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のため30問』(PHP研究所)より一部抜粋して危機を乗り越えていくためのリアルな方策を紹介します。(全2回の1回目/後編を読む)

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CASE1

突然の「在宅勤務」導入で潜んでいた問題が続々と噴出!

 営業サポートを手がける我が部門。今回のコロナ禍で急遽、在宅勤務をスタートさせた。しかし、それによっていわゆる「仕事量の格差」が明るみに。特定の人に仕事が集中する一方、ほとんど何もしていない人がいることが判明したのだ。

 部門長の私のところには「なぜ、私にばかり仕事が集中するのか」「Aさんはサボっているに違いない」といったクレームが続々と寄せられている。このままではチームがバラバラになってしまいかねない……。

Q.この混乱をどう解消し、どのように公平な仕組みを作り上げるか?

「仕事が遅い人」がトクをするという矛盾

 2020年に世界を襲ったコロナ禍により、リモートワークや在宅勤務の導入が一気に進みました。それにより、こうした問題が多くの企業で浮上しているようです。

©iStock.com

 しかし、これはコロナ禍による一過性の問題ではなく、「仕事とは何か」の本質に関わる、非常に重要な問題です。

 働くということが、旧来型の労働力の提供という意味合いから、ホワイトカラーを中心に知的生産性という意味合いにシフトしている現状、そうした人たちの仕事の成果とは時間ではなく、その人の生み出した価値で測るべきです。

 しかし、今の日本には、「会社にいる時間=成果」という、かつての大量生産時代の意識がまだ根強く残っています。そのため、同じ仕事を1時間で終わらせる人も1日で終わらせる人も評価は同じ、という問題をずっと内包してきたのです。

「1日中新聞を読んでいるおじさん」や「隠れてゲームをする社員」がいたのも、「会社にいれば仕事をしていることになる」という意識があったからでしょう。

 コロナショックは、元々あったこうした問題を浮上させたに過ぎません。

数字が見えにくい部門は「質」を評価せよ

 解決策としては、拘束時間ではなく成果をベースにした「真の成果主義」に変えていく他ないでしょう。 元々数字が見えやすい営業部門や制作部門では、これは比較的容易なはずです。一方、経理や総務などの管理部門は数字との関連が見えにくいため、稼働時間 (=仕事の量) で割り振る他ありません。