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「バレリーナの卵が吐きダコと…」芸人・ヒコロヒーが考えた“宇宙の漫画”の中身とは――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

『まんが未知』(テレビ朝日系)

note

「宇宙の漫画です」

 自分が書いた原作をヒコロヒーはそう形容し、SFの要素がありつつ『ブリジット・ジョーンズの日記』風味もあり、エンターテイメントの全てが詰まっている作品だと言い放った。漫画好きの芸能人が原作を書き、それをプロの漫画家が作画を担当し、ひとつの作品を描き上げる番組が今年4月からテレビ朝日の深夜枠「バラバラ大作戦」で始まった『まんが未知』だ。完成した作品は「GANMA!」などの漫画配信アプリで無料で読むことができる。

※写真はイメーシ゛ ©iStock.com

 これまでもかが屋・賀屋やラランド・ニシダ、宮下草薙・宮下、料理研究家のリュウジなど芸人を中心に多彩なゲストが原作を担当。「コロコロコミック」好きの錦鯉・長谷川は同誌のレジェンド漫画家であるのむらしんぼと夢のようなタッグが実現したり、少年漫画好きのアイドル・日向坂46の丹生明里が「週刊少年ジャンプ」で連載経験もある蔵人幸明と組んだりと、組み合わせの妙も面白い。

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 芸人を辞めて漫画家になろうとした時期があったというヒコロヒーが書いてきた原作は「バレリーナを夢見る女性が吐きダコとしゃべる」というシュールな物語。その作画を担当するのは、アニメ化もされた『ギャルと恐竜』を描いたトミムラコタ。この番組の原作担当は漫画愛が強く、原作は詳細に書き込んだものが多かった。コマ割り案まで出している人もいたほどだ。だが、ヒコロヒーは「体重を気にする若きバレリーナの卵 過食嘔吐を繰り返している」「吐きダコに生命が生まれる」「吐きダコは宇宙 その存在によってバレリーナの精神は健康になっていく」「過食嘔吐しないので吐きダコは小さくなっていく」など8項目のざっくりとした箇条書きのみ。トミムラもそのカオスな物語に「頭に話が入って来なくて……」と頭を抱える。「これギャグ漫画じゃない?」と疑問を口にするとヒコロヒーは「ちょっと……、失礼ぶっぱなし発言ですね。ギャグだけない。それ以外全部ある」と言うのだ。ヒコロヒーが要求するものは、これまでのトミムラの作風とはかなり違う。一緒にキャラクターデザインをしていくと普段の彼女のポップな絵柄とはまったく違う造形にヒコロヒーは「そう! そう! そう!」とイメージを共有していく。要求に合わせ絵柄まで即座に変えられるプロの漫画家はやっぱりスゴい。

「不安60%、楽しみ40%」と言っていたトミムラだが、果たして完成した作品は司会のハライチ・岩井が「これを読んで『人生が変わりました』って人が一定数いそう」と評すほどの傑作。余白のある原作だからトミムラのオリジナル部分も生かされ、共同作業ならではの化学反応で、それぞれひとりでは到達できないであろう地点に到達していた。

INFORMATION

『まんが未知』
テレビ朝日系 水 25:56~
https://twitter.com/_mangamichi_

「バレリーナの卵が吐きダコと…」芸人・ヒコロヒーが考えた“宇宙の漫画”の中身とは――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

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