永野芽郁が演じる新人警察官、川合麻依は、毎回ドラマの冒頭で故郷の父に手紙を読みあげる。

 拝啓、お父ちゃん。この夏の暑さと豪雨は、新米のわたしには辛すぎて、感染症でダウン。でも、いまは全快して現場復帰です。

 コロナから復帰したいまなら、川合はお父ちゃんにこう書いたかもな。就職するなら公務員。安定を求め各種試験を受けたが、合格したのは警察官だけ。

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 交番(ハコ)に配属されたが、そこはまともな睡眠もとれない過酷な職場だった。やる気もなければ、要領も悪い川合は、辞職願を肌身離さず持っている。

新人警察官、川合役の永野芽郁

 そこに“デキる”お姉さん、藤聖子(戸田恵梨香)が登場。頭は切れるし、チンピラ相手の逮捕術の腕前も文句なし。刑事課でもエースだった彼女が、なぜ交番勤務に飛ばされたのか。

 サボることしか頭にないハコ長(ちょう)の伊賀崎(ムロツヨシ)に訊いても「ま、藤クンは後輩へのパワハラとか色いろあったようだし」と要領を得ない。こんな美人の先輩がパワハラって、怖ッと思ってたら、「川合、パトロール行くよ」と藤さんは颯爽と街へ。慌ててドタドタ後を追う川合だ。

 クールで推理力も抜群。肝もすわった藤聖子。片や川合はといえば、もうこんな仕事は嫌ァ、すぐにでも辞めたいよぉと泣くダメダメ警察官だ。好対照の二人が、小さな町の交番でペアを組み、マスコミも報じない、でも厄介な事件に取り組んでいく。

 文句なし。『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』は今期最高のドラマだ。永野芽郁は容疑者を追って、毎回ドタバタ走る。お父ちゃん、わたしもう駄目ェと心で叫んでると、本当にバタアンと転倒する。この転げっぷりが可愛くって。

 川合を甘やかさず、しかも一人前にするため優しく接する藤を演じる戸田恵梨香が格好いい。『俺の家の話』で、長瀬智也を相手に、善悪超越した女の存在感をみせてくれた戸田だが、今作も訳あり元刑事を演じ、さらに永野の良さも上手に引きだす。ナイス。これもシスターフッドかな。

“デキる”お姉さん、藤役の戸田恵梨香

 ともかく観ていて気分がいい。なぜか。彼女らがいるような町の交番が、いまはなくなったからだ。

 昔はね、住民に気を使い、優しく接する“おまわりさん”がいたの。それが今じゃ、ノルマ達成のため、自転車盗難摘発狙いの不審尋問と、スピード違反車の摘発に血道をあげ、半グレの喧嘩、脅しなど、うっかり介入したら怪我する事案は見て見ぬフリ。

 そんな警官ばかりだ。拝啓、お父ちゃん、わたしは町の人が安心してくれる交番のおまわりさんになります。のほほぉんとした顔で、そう思い始めた川合と、その成長を支える藤の姿を観ることができて、お父ちゃんは嬉しいよ。

INFORMATION

『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』
日本テレビ系 水 22:00~
https://www.ntv.co.jp/hakozume/