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「このリーダー、このチームのためならば!」

 内村の現場スタッフがみな内村を、「好き」になってしまう所以は、こういうところに もある。なお黒川氏は内村のこの姿勢を見習いたいと、担当番組が増えた折、オンライン での邂逅も多かった中で、スタッフ一人一人の名前をすべて覚えたという。

 さらに内村は現場のスタッフに、よくあだ名をつける。対象者を傷つけるでもなく、こ とさら持ち上げるでもなく、絶妙なネーミングセンスを披露するという。飯山氏はこれを「1個、頑張れる理由を与えてくれる人」と表現した。

 たとえば、映画『金メダル男』の現場では、多数の看板を準備しなくてはならず苦労していた美術スタッフを「ミスター看板」、雨降りのシーンの撮影になるとどこからともなく現れ見事な雨シーンを作り上げ去っていくラインプロデューサーを「雨の魔術師」など、どことなくユーモアも、敬意も感じられるニックネームをつけ、現場を盛り上げていたそう。実際、他のスタッフも内村がつけたあだ名を真似て呼ぶようになるため、チームがまとまる初速が上がり、チームの雰囲気・空気感が和み、結束も強くなるのだとか。

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©iStock.com

「新人マネージャーさんに対しても『よ!  マセキの期待の新星!』などの言葉でいじり、周囲を笑わせつつご本人の緊張をほぐして、その場の空気を柔らかくしてくださいます」(スタイリスト・中井氏)

「マセキ」とは内村の所属事務所、マセキ芸能社のことである。

 リーダーがスタッフの名前を覚えて呼ぶという行為は、それぞれのメンバーを「個」として認識している証明であり、その人に対してプロジェクトにおける“居場所”をつくることにもつながる。名を呼ばれた者は、アドラーが語るところの「共同体感覚」をそのリーダー率いるチームに抱くようになるだろう。ありがたい付随効果として、リーダーに対する小さな「忠誠の念」もついてくるかもしれない。

 そしてその小さな気持ちが徐々に、「このリーダー、このチームのためならば!」という行動モチベーションへと変わる要因になっていく。