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《芸歴36年》内村光良はなぜ「大御所」にならないのか「現場で関わる様々なスタッフの『名前』を覚えて呼ぶ」「現場をひょっこり見にくる後輩も…」

『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』より#1

2021/09/07
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「収録終わりに一声掛けて握手してくれた」

 読者が普段どのような人数単位の職場で仕事をしているかにもよるが、少人数でいつも決まったメンバーのチームであれば、名前を覚えるのはそう困難なことではない。一方で、抱えている案件が複数あったり、大勢のメンバーが関わるプロジェクトであったりすると、関わりの薄いメンバーの名前や特徴は、どうしてもうろ覚えで進んでいくことも実際は多いだろう。

 関係者全員が同じ会社の同僚というわけでもなく、サラリーマンもフリーランスもベテランも新人もおり、立場も性別も環境も職能も異なるメンバーで「チーム」を組まなければならないときなど、名前を覚えるどころか確認するだけで一苦労であることには同感である。

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 それでも、リーダーはこの努力を怠ってはいけない。仕事におけるチームは、たまたま、 偶然、縁あって“同じ船”に乗ることになった仲間と航海しなければならないようなもの。 互いに好意を抱き合い親睦を深めた友だちとはまるっきり違う。チーム員全員が最初はある意味寄せ集めで、互いに探り探りでいる。

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 そんな中で、船長から、「おい、掃除係」と話し掛けられた場合と、「おい、山田君」と 声を掛けられた場合、どちらが作業のモチベーションを高めてくれるかは想像に難くない。

 そして、それが忙しいリーダーからのものであれば、なおさら喜びとチームへの当事者 意識に結びつき、チーム員のやる気を導く。

「内村さんはどんなADさんも名前を覚えて、他の番組に移動しますって時も嫌な顔せず、『ありがとう、また会えたら』とさらりと言う。違う現場で再会すれば、『おお、元気?』と声を掛ける。見てもらっている、認めてもらっているという気持ちになり ますよね」(テレビ東京・伊藤氏)

「APさんが辞めちゃうと聞けば、収録終わりに一声掛けて握手してくれて、その子が泣いてしまったりします。その子は、この番組をやっててよかったなと思うでしょうし、そうやって人の心を掴んできますよね」(日本テレビ・黒川氏)