5年連続で「理想の上司」ランキング1位に輝いたのは、ウッチャンナンチャンの内村光良氏である。コントから司会まで幅広く活躍する内村氏が率いるチームは、いつも“いいもの”を生み出すと評判が高く、業界内での信頼はとても厚い。

 クリエイティブディレクター・畑中翔太氏も、内村氏と仕事をともにする中で、そのリーダーとしての「背中」に魅せられた1人である。同氏による『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)より一部抜粋して、内村氏のリーダーシップの秘密を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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自らが「ドM」である

 内村は、常に「内村光良」自身に満足していない。それはまるでアスリートが0.01秒 でもタイムを縮めようと延々と努力を重ねるように、常に「芸人」としての成長と進化を自分の中で追い求めている。

 それは彼の意識の中に、「自己成長を求め続ける」マインドサイクルができているからだ。

 なぜ内村は、自分自身に挑戦を課すことを未だにやめないのか。関係者たちの証言から 推察するに、その並外れたストイックさ・貪欲さの謎を解明するキーワードは、「ドM」 という気質につきそうだ。

「普通は笑いって、ある意味鮮度が大事だったりするんで、何度も稽古をすればするほど芸人さんも飽きてくる。でも内村さんは、驚くほど稽古をするんですよ。鮮度とか通り越して、稽古の向こう側で笑いを勝負しているみたいな。あれだけ自分を追い込むっていうのはホントMなんでしょうね(笑)」(片山勝三氏)

「やっぱりドMなんですよね。それは結構でかい話だと思います。本当にドMな人だから、なんだろうなあ、自分に負荷がのしかかればのしかかるほど、頑張れるタイプなので。ロケもきつければきついほど、おもしろくしてくれる」(日本テレビ・古立善之氏)

「グアムロケのホテルでも、空き時間はプールサイドに行くことなく部屋で黙々と書き物をしてました。遊びたい気持ちとやらなきゃいけない気持ちだと、やりたい方が勝っちゃうんでしょうね。いつもドキドキしていたいんだと思います。別にそんなことをしなくてもいいのに、苦しい方に苦しい方に行く。苦しいことが好きなんだと思 いますね」(ヘア&メイクアップアーティスト・大の木ひで氏)

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「追い込む」「負荷があるほど頑張れる」「苦しいことが好き」という、この“ドM”気質 が内村を自己成長の無限ループへといざなっている。

 そんなドMな内村の口癖の一つに、「あと1回いいですか?」というセリフがある。

 ウド鈴木氏が、「内村さんはたとえ失敗したとしても、それを笑いに変えながら、『いや、もう1回』って言うんです」と教えてくれた。

『イッテQ!』での大車輪や跳馬ロケも、『内村文化祭』でのピアノ演奏も、チャレンジに失敗したあと、確かに内村は「もう1回」と口にしていた。ウド氏はそんな内村を見ていると、成功することだけがすべてではないと痛感するという。