文春オンライン

――マライさんは競技も取材をされていたんですよね。印象に残った種目などはありましたか?

マライ 新種目のスケボーやBMXの選手たちのことを一瞬で好きになりました。国を背負って戦うというよりも「仲間」という感じがいいですよね。競争はもちろんありつつ、他の選手のベストプレーで盛り上がるのは明るい気持ちになります。オリンピックの文化を変えるとしたら、彼らのストリートの文化なんじゃないかと期待しています。

スケボーの選手たちが醸し出す「仲間」感 ⒸJMPA

――スケボーは解説の瀬尻稜さんも「ゴン攻め」などくだけた言葉遣いが新鮮でしたね。

ADVERTISEMENT

マライ 瀬尻さんや新体操の田中琴乃さん、空手(型)の清水由佳さんなど、今回のオリンピックは実況や解説の方が日本以外の国の選手も公平に紹介してくれることが多かった印象です。選手がメダルを取ったとして、すごいのは国じゃなくて本人ですよね。スポンサーが海外企業の選手も多いし、国籍は本当はどうでもいいんですよ。夜のスポーツニュースは日本選手がメダルを取るシーンしかやってなかったのでげんなりしましたけど(笑)。

距離を取り、マスクをしての取材も想像以上にスムーズだった ⒸJMPA

――ドイツではドイツ以外の選手の報道も日本より多いのですか?

マライ そこは正直大きな違いはありません。だからこれは日本というよりオリンピック全体の問題だと思いますね。

「NHKの不自由さの方が特殊じゃないかと思います」

――マライさんはドイツ第2テレビという公共放送のプロデューサーを務めながら、Twitterなどで自由に発言されています。NHKのスタッフが実名アカウントでオリンピック批判をする状況は日本では考えづらいのですが、なぜそんなに自由に発言ができるのでしょう。

マライ どちらかと言うと、NHKの不自由さの方が特殊じゃないかと思います。テレビの番組は仕事として公平に作る、私は個人として思ったことを自由に発信する。それでいいんじゃないですか……? 

マライさんとドイツ第2テレビのスタッフ マライさん提供

――全くの正論なのですが、日本のメディアで中の人が本当に自由に発信しているところはほぼないように見えます。

マライ 日本のテレビ局は、中の人と1対1で話すと深く物事を考えている人もいるのに、実際に放送される番組がとても“ぬるい”のが気になります。あと印象的なのは「うちの会社」という言い方をする人が多いこと。ドイツの報道機関の人間は自分たちの組織を「会社」とはまず言わないので、個人と組織の関係の違いを感じますね。Clubhouseアプリのトーク仲間だった日本のとあるテレビ局の人も、あとで上司から「好き勝手にしゃべるな」と注意されて一緒に話せなくなってしまいましたし。