――だからこそ、オリンピックについても良かったところとダメだったところをどちらも率直に表明できるのですね。今回東京オリンピックを取材してみて、ドイツでオリンピックを開かれることになったらマライさんはどう思われますか?
マライ うーん、賛成はしませんね。実際2024年のオリンピックをハンブルクに招致しようとしたこともあるのですが、市民投票でNOが過半数を占めて撤退しています。
――NOの理由はどんなものだったのでしょう?
マライ やっぱり数兆円という開催費用が一番の理由です。国際イベントに積極的なのは世界に何かアピールする必要がある国ですよね。ドイツ人は現状に満足している人が多いので、わざわざ大金を使う意義を感じていないのかもしれません。逆に中国の熱意はすごいですよね。今回のオリンピックでも中国メディアはものすごい数のスタッフを日本に送り込んでいて、2022年の北京冬季オリンピックへ向けてなんとかムードを盛り上げようという意志を感じました。
いま必要なのは「内向きのアゲ」じゃない
――たしかに来年の2月が開幕なのでもう半年後に迫っています。
マライ 経済的にも文化的にも中国の勢いは本当にすごいので、日本推しの私としては東京オリンピックでなんとかアピールして欲しかったんですが……。
――というところへ話が戻ってきてしまいました(笑)。
マライ 日本は観光地としてはもちろん文化の発信地としても魅力的なところがいっぱいあるのに、それがオリンピックで世界に伝わった感じが全然しなくて、本当にもったいなくてしょうがないんですよ。で、その代わりに「外国人選手が日本のホスピタリティに大感激!」みたいな日本語記事が量産されて、ひたすら日本人向けアピールが繰り返される。いまは「内向きのアゲ」をしてる場合じゃないでしょ。本当に日本にとって何が必要なのか、深く再考すべきタイミングだと思います。