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「本院は土井たか子君を内閣総理大臣に指名する」 女性初の首班指名

 宇野首相は、7月24日退陣を表明した。自民党の後継総裁は、8月8日に両院議員・都道府県代議員によって選出されることになり、河本派の海部俊樹に決まった。8月9日の臨時国会での首班指名では、まず第一回から社会党・社民連・連合の会のみならず、公明党が「土井たか子」と記名した。民社党は永末英一、共産党は不破哲三に投票した。参議院では決選投票になり、社会党・公明党・社民連・連合の会・共産党が土井に投票した。民社党は白票であった。労働組合をバックとする社会党と民社党で割れたのだ。民社党は、一部企業からも支持を受けており、土井に投票したら献金を断つと言われた民社党議員がいたという。

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 午後2時2分「土井たか子君、127票、海部俊樹君、109票、本院は土井たか子君を、内閣総理大臣に指名する」と、土屋義彦参議院議長が発表した。首班指名は「衆院・海部、参院・土井」となり、両院議員協議会では当然調整がつかず、衆院本会議に差し戻された。午後5時37分、田村元衆院議長が「憲法第67条第2項により本院の指名の議決が国会の議決となりました」と告げた。

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 片方の院であっても、女性が首班指名されたことは初めてである。女性が政治の頂点に最も近づいた瞬間であった。なお、衆参の首班指名が異なったのは、1948年2月、衆院芦田均、参院吉田茂となって以来であった。土井は、約300件の取材を受けることになる。