2005年にグローバルでサービスを開始したYouTubeだが、現在では世界中で投稿される動画の量は毎分あたり500時間を超える巨大プラットフォームへと成長している。昨今では大物芸能人の参入が相次ぎ、さらにコロナ禍による外出自粛という「追い風」もあったため、日本における月間ユーザー数は過去最高の6500万人を記録した。
一方で、ヘイトスピーチや誹謗中傷を含む動画、あるいは違法動画が社会問題化することも少なくない。去る8月7日には246万人ものフォロワーを持ち、作家やYouTuberとして活動する「メンタリスト」のDaiGo(ダイゴ)が、ライブ配信でホームレスや生活保護受給者の生命を軽視する発言を行ったことも記憶に新しい。かねてより、注目を集めて動画の再生数を伸ばすために過激な投稿を行う「迷惑系YouTuber」の存在は問題視されており、刑事事件として逮捕に至るケースも増えてきた。
世界を股にかけた巨大プラットフォームが日本社会に与えた「光」と「影」について、YouTubeの“日本トップ”である仲條亮子氏に聞いた。(全2回の2回目/#2を読む)
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石橋貴明、指原莉乃……
相次ぐ大物芸能人のYouTube参入
――昨年、TVタレントの石橋貴明さんや俳優の仲里依紗さんなどの著名人がYouTubeチャンネルを開設しました。以前にも増して、地上波で活躍する芸能人たちの参入が相次いでいますね。
仲條 はい。とてもありがたいことですし、私たちの調査では18~64歳という幅広い層にYouTubeを「なくなったら最も寂しいプラットフォーム」と言って頂く機会も増えました(※出典:Think with Google「月間 6,500 万ユーザーを超えた YouTube、2020 年の国内利用実態──テレビでの利用も 2 倍に」)。
――その一方で、以前からの動画投稿者や、一般的なクリエイターたちは、より激しい視聴者獲得競争に直面しているのではないでしょうか。過去には、YouTube上で10万回再生を稼ぐ動画は全体の1%に満たないと推測するデータもあります。
仲條 日本におけるYouTubeの月間ログインユーザー数は、昨年9月時点で6500万人まで増えています。その伸びと比例するように、10万人以上の登録者数を持つチャンネルも4500以上に増えてきました。じつは登録者数が100万人を超えるチャンネルも、300チャンネル以上あります。
クリエイターの方々が増えていく一方、視聴者の方々も増えています。チャンネル登録者数の伸びから分かるように、とても堅調な成長だと私たちは見ています。
《YouTube上でお気に入りのチャンネル(番組)に登録すると、視聴者はその最新回などの情報を追いやすくなる。チャンネル登録者数が100万人を超えることは著名芸能人でも難しい。石橋貴明によるチャンネル「貴ちゃんねるず」は現在167万人登録だ(8/24現在)》
――動画投稿者は今後も増えていく、とお考えですか。
仲條 「YouTube ショート」(最大60秒までの縦型の動画が投稿・閲覧可能)という機能があるんですが、それはできるだけ簡単にクリエイターの方に表現できる場を提供するものです。短尺の動画に特化した機能で、アプリ上で動画編集ができる、とても使いやすいものです。