「お子さんが階段から落ちてしまいました」

 埼玉県の特別支援学校で2020年11月、中学部1年の男子生徒(当時13歳)が学校内で怪我をした。

 冒頭のように、担任から連絡を受けた保護者があわてて学校に向かうと、生徒は保健室におり、保護者が自ら近くの病院へ運んだ。診断の結果は骨折。医師が「交通事故並みの大けが」と指摘するほどの状態だったにもかかわらず、母親が病院に運ぶまでの間、学校は事実上、放置していたのだ。

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学校側の説明は二転三転、保護者は不信感を抱き

 この事故をめぐって、保護者への学校側の説明が二転三転したことで不信感を抱いた保護者が調査を要望。県教委は「調査委員会」を設置することになった。

 県教委特別支援教育課は「保護者から不信感を招いたのは申し訳ない」といい、調査委では事故の経過と原因、再発防止について調査、審議を行う。県内の特別支援学校での学校事故で調査委員会が設置されるのは初めて。また、補償問題も交渉中だ。

 なお、骨折した場にいた担任(20代)は非常勤で、事故後に休職、任期満了で退職している。

 生徒が通っていた学校は、埼玉県立草加かがやき特別支援学校。母親側によると、生徒は身長152センチ、体重50キロ。重度の知的障害と、身体障害があり、自力歩行は困難。またコミュニケーションがままならない。そのため、生徒から詳細な証言は得られない。

「階段から落ちてしまった」との連絡で母親が学校に向かうと…

 事故があったのは20年11月9日。その日の朝9時ごろ、母親が生徒を学校へ送ったという。そして、学校の教師たちに昇降口付近で生徒を引き渡した。その後、母親は仕事に向かったが、9時25分頃、担任から「生徒が階段から落ちてしまった」との連絡があった。母親は職場にその旨を話し、学校へ向かった。

「救急車を呼んでほしい、との話もしたんですが、学校に到着すると、息子は保健室に保護されていました。足が腫れていた上、顔面蒼白で放心状態でした。そのため、10時10分、学校の近くの病院に自分で運びました」(母親)

男子生徒のレントゲン写真(ご家族提供)

 レントゲンを撮ったが、処置が十分にできないと判断された。12時35分、再び母親が、今度は大学病院へと息子を運んだ。医師は左脛骨、腓骨の骨折と、すぐに搬送せず、処置を行わなかったことにより、血管が圧迫されるなどの「コンパートメント症候群」と診断した。骨折の形が「らせん骨折」でもあり、医師からは「交通事故並みの大けが」と説明があったという。