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2021/09/02

総額100万円以上を使ったけど、「私は運が良かった」

 折しも、感染者数が落ち着いてきているタイミング。卒業前に一回だけ、ミユキさんは彼を指名した。「オタク的にはやっぱり“推しの卒業”イベントはちゃんとやっておきたい気持ちもあった」とミユキさんは振り返る。最初の指名でも利用したバリアンを予約して、一二〇分コースを受けた。

「泣いちゃう人もいたらしいんですけど、私は泣くことはなかったです。さすがにガチ恋する年齢でもないですからね。最後に一応『私はいいお客さんだった?』と聞いたら『そうだね』と答えてくれました。営業トークだとは思いますが、今後の指名につながらなくてもその言葉をくれたのが、一番うれしかったです。

 寂しくはありましたけど、だからといってそれが大きくメンタルに影響することもなく、日常に戻ることができました。SNSや掲示板では、セラピストと客が泥沼になって炎上するケースも見かけます。ホテル代も含めて総額100万円以上は使ったと思いますけど、私は運がよかったのかもしれませんね」

写真はイメージです ©iStock.com

風俗を利用したことで、セックスへの恐怖が減った  

 女風を卒業した今、現実の異性へのスタンスはどうなっただろうか? 聞いてみると、マッチングアプリの利用を再開したという。

「セックスはまだ少し怖いですが、推しとPDCAを回しまくった結果(笑)、『どの角度で挿れたら痛くないのか』がなんとなくつかめた気がするんです。元恋人や元夫の場合『好きだからこそ』遠慮して言い出せなかったことが、『この人は仕事でやってるんだから!』とここが痛いとかこっちがいいとかを言葉にできたんです。あ、挿れていたのバイブですよ、そこは誤解のないように。

 世の中には『風俗に行ってセックスへの恐怖が減った』っていう男性の声も多いじゃないですか。それは女性でも同じことなんじゃないかと思うんです。主語が大きいかもしれませんが」

 性的なサービスへの課金というと、“欲望”と単純にくくられやすい。しかし、シンプルな言葉の裏側には、人の数だけ事情がある。折り合いの付け方も人それぞれだ。ミユキさんの話を聞いて、私も、自分の欲望をもっと解体してみたくなった。

沼で溺れてみたけれど

ひらりさ

講談社

2021年7月14日 発売

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