「新型コロナウイルスは、投資の条件たる『信用創造』を突き崩す究極の『暴力』だった」そう語るのは、マネーの表と裏を知り尽くした評論家の猫組長である。ここでいう「暴力」とは人を傷付けることではなく、移動や飲食など「自由の権利」を制限することである。
アメリカと中国による「暴力」の応酬のはざまで、日本の〈投資家たちの取るべき態度〉とは、一体どのようなものなのか。同氏による『カルト化するマネーの新世界』(講談社)より一部抜粋して紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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ワクチン開発を成功させた投資環境
コロナ禍を通じて再認識したことがある。それは、アメリカが潰れることなどありえないということだ。そう確信する理由は、アメリカによるワクチン開発にある。
感染症の医療は予防→検査→治療の順番で病気に対応する。インフルエンザには予防ワクチン、短時間で結果の出る検査、そしてタミフルなどの治療薬があるので「共生」が可能となっている。対して新型コロナは「クラスターを作らない」「マスク着用」などの予防は公衆衛生的。検査こそPCRがあるが、現在のところ治療法は対症療法のみだ。
そこで医学は2つのアプローチを試みた。主流派がワクチン、非主流派が治療薬の開発だ。そこに投資が行われるということで、投資家は高いレベルの開発についての情報入手が可能となっている。
ワクチンではロシアと中国が「開発の先行」を自賛していた。が、中ロが「開発」という言葉を使った時、常に疑惑を持つのが投資の世界の常識だ。この時は、内部から治験データがリークされて、疑いは確信になった。
それ以前の問題が、株式市場での透明性だ。たとえ一流企業でもスキャンダルが露見すれば時価総額が下がるばかりか、資金調達が困難になる。だが中ロ両国ともにトップの権力が絶大で、投資環境も透明性からはほど遠い。投資環境の透明性という意味で、本命の1つとされていたのが、イギリスの製薬会社「アストラゼネカ」だ。「もっとも進んでいる」とされていたが、2020年7月くらいから「難しい」という観測が同社内部から聞こえていて、
「株式市場から未曾有の資金調達ができている。しかしウイルスの型が増えてしまって、すべてを網羅するのは不可能かもしれない」
という内部情報も漏れてきたのである。同年9月8日には副作用の疑いで治験が中断されたが、その後再開され、2020年12月末にイギリスで承認された。
一方で、感度の高い投資家は非主流派である治療薬の開発を2020年3月くらいから開始していた「ファイザー」に注目していた。私が「ファイザー」を信用していた理由は、同社が「アメリカ」の企業であるという点だ。