理論構築、ラボの建設、実験設備、実験、生産、そして人件費……科学技術の開発が成功するために必要なのは「莫大な資金」だ。ましてや「コロナ」のような「喫緊の開発」が必要とされる場合、迅速にマネタイズ(資金調達)を行わなければならない。世界で1番それを実行できる能力がある国がアメリカである。なぜか──。
それはアメリカが世界で一番「戦争」を経験している国だからだ。
戦争の敗北は、基軸通貨「ドル」の信頼を揺るがせる。ドルの信頼低下は国富の損失ということで、アメリカにとって「戦争」は常に「国家存亡の危機」なのだ。だが戦争は「不測の事態」が連続発生する「暴力の応酬」だ。それを打開する決定要素こそ「科学技術」ということになる。
アメリカ人だけに許された「特権」
第2次世界大戦でアメリカは「ドイツが原爆開発を進めている」という情報を入手すれば、世界中から天才を集めて、徹夜で働かせ実験原子炉を作った。ベトナムの空でソ連の戦闘機「ミグ」に苦戦を強いられれば、「F-15」を開発。イラクが頑強な軍事施設を地下に造っているとわかれば、地中貫通爆弾を開発して攻撃を行う。
世界で戦争当事国として一番経験しているアメリカは、暴力とマネーが技術を生み出すという投資環境がもっとも整備された国ということだ。
2020年5月には、アメリカの「スペースX」が世界初の民間有人宇宙飛行を成功させた。対して日本では堀江貴文氏が「インターステラテクノロジズ」を創設し、ロケット開発を行っている。「スペースX」は2020年5月に約540億円を資金調達。対してIR情報によれば2019年7月に「インター」社は12・2億円を調達した。
戦時での下地があるからこそ技術ベンチャーにアメリカの投資家は投資を行う。対して日本の投資環境は、凍えるほどにお寒いということだ。
投資の話になると「アメリカが」「アメリカは」と、とかくアメリカをモデルにして模倣を強要したがる人がいる。だが、この人たちは暴力と連動させることで作り上げたアメリカの投資環境を本当に理解しているのだろうか。
資源を持たない日本にあって企業は「為替」の変動リスクに常に頭を悩ませ、個人消費者もガソリン、食料、日用品に至るまで常に為替リスクに晒されている。民主党政権においては円高放置が行われた。為替はアメリカとの外交問題なのだが、当時は場当たり的な外交を行ったことで円高が続き、多くの工場が海外に移転。生産空洞化した「悪夢」は現在まで続いていることが、「為替リスク」のわかりやすい例だ。