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コロナの明暗を分けているのは「暴力」

 コロナという「暴力」には「暴力」でしか対応できないが、「暴力」の行使主体は「国家」ということになる。

 中国、台湾、ニュージーランド、オーストラリアなど、新型コロナ封じ込めに成功した国や地域もあった。明暗を分けているのは「暴力」だ。成功した国は個人情報を国家が管理している。感染の芽をいち早く摘み取り、強力な移動制限を行うなどピンポイントで「ソフト・マーシャルロー(=緩やかな戒厳令)」を敷いていたということだ。

 2021年5月24日、国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏がWHO(世界保健機関)年次総会の冒頭演説で、世界が新型コロナウイルスと「戦争状態にある」として、「戦時の論理をもって対処するように」と呼びかけた。コロナという圧倒的な暴力に晒された「戦時下」という状況を考えれば「ソフト・マーシャルロー」は当然の措置といえるだろう。

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 感染拡大防止の中では政府による緊急事態宣言が発動された。私権制限がないということで「自粛」という形になったが、多くの飲食店は「営業の自由」を制限されたのだ。「緩慢な国家暴力」を行使されたということになる。2021年4月の厚生労働省通知によって、トレーニングを受けた歯科医師がワクチン接種を行えるようになった。これまでの医療界の慣例を「国家暴力」が打ち破ったということだ。

 コロナ禍で破壊された国家と国民の信用回復のために、日本でも遅まきながら「国家暴力」が行使され始めたことに私は賛成している。まさに「戦時の倫理」ということになる。

 新型コロナウイルスは国内の経済を大きく傷付けた。また前述したようにコロナ禍を軸に新冷戦構造の緊張が高まるのは既定路線だ。

「半導体は産業のコメ」として80年代に世界の半導体をリードしていたのが日本だ。半導体産業衰退の原因は1986年に合意した「日米半導体協定」だが、アメリカの圧力に屈した理由も暴力を保有していなかったからだ。新冷戦構造下でアメリカは中国の半導体製造技術を規制した。その影響で、自動車製造用の半導体の供給不足が2020年末ごろから世界中で問題となる。

 かつての半導体王国日本は、半導体生産を外注しているありさまだ。

 2021年6月4日、経済産業省が、半導体の生産・供給能力確保などを盛り込んだ「半導体・デジタル産業戦略」を発表した。

 訪れる「冷戦構造緊張激化」「コロナ禍復興」は、戦後復興同様、国家が暴力的に主導することが最良だ。新冷戦構造でこぼれおちた「半導体」を手に入れるという意図だが、「暴力」を保有しなければ同じ結果になることを歴史から学ぶべきだと私は考えている。