1ページ目から読む
4/5ページ目

日本人が「暴力」を考える最大のチャンス

 またコロナ禍ではマネーが濁流のようにあふれ出した。マネーの反乱はインフレを招く。FRBは失業率とインフレ率を睨みながら、どこかでテーパリングを行わなければならない。2021年6月19日にはFBR議長、ジェローム・パウエル氏がテーパリングに関する議論が始まりつつあると明かした。

 その時、マネーを集める土台が「暴力」であることはアメリカが証明したとおりだ。

 1945年の敗戦への反省と、それに続いた戦後民主主義教育の「負の遺産」は、日本人に「国家暴力=民主主義の崩壊」という間違った認識を植え付けた。そればかりか「暴力保有」が「暴力行使」と同じ意味で考えられている。コロナ禍は日本人の「暴力」に対する誤解をあぶり出した。すなわち日本人が「暴力」を考える最大のチャンスでもある。

ADVERTISEMENT

 暴力を保有し、その暴力を行使する場合、重要になるのが「コントロールすること」だ。前述した「シビリアン・コントロール」が敷かれるのもそのためだ。

 その理由は「人道」でもなんでもない。暴力が暴走した時のほうが損失が大きいという経済的理由があるからだ。

 核兵器は1945年に日本で使用されて以来、一度も使用されていない。人類を破滅に追い込むほどの強力な暴力を先制して使用すれば、自分の国にも莫大なダメージを与えるリスクが高いからだ。

©iStock.com

 自国利益のための戦争行為は「侵略」になる。そうして国際社会から孤立すれば、貿易という巨大な国富を喪失することになる。2003年からのイラク戦争は、その3年前にイラクの大統領、サダム・フセインが石油決済をドルからユーロに替えようとしたことが大きな原因とされている。石油のドル支配を理由にすれば「侵略」ということで、アメリカは「イラクが大量破壊兵器を保有している」ということを動機にした。この真偽の真相は実は不透明なのだが、自国の利益のために躊躇なく暴力を行使するアメリカでさえ、暴力行使のためには国際法順守を建て付けるということだ。

 このコントロールに反していた大国が中国だ。中国と関係することがアメリカの利益を生むことで許されていたが、不利益が確実になった時に起こったのが米中貿易戦争からの新冷戦だ。

 暴力団でさえ日常的に暴力を行使するわけではない。実行犯の逃走資金、裁判費用、実行犯の家族の生活費、そればかりか共同正犯でトップが逮捕されれば、同様の費用がかかるのだ。