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わずか1カ月間で三女性を殺人

 強姦殺人と思(おぼ)しき事件が発生したとの一報を受け、東京を出て福岡県飯塚市の現場に到着したのは、薄暮から夜へと変わるころだった。被害者の女性は専門学校生だという。

 04年12月13日のこと。前日の深夜に起きた犯行の現場となった公園は、正面を流れる小川から細い道を挟み、芝生にブランコと鉄棒だけが置かれた寂しい造りだった。周囲を見回すと街灯は少なく、かなり暗い。犯人によって園内に連れ込まれたことが想像された。

 被害者の名前は安川奈美さん(仮名)。飯塚市内にある歯科技工士の専門学校に通う18歳である。旧知の福岡県警担当記者に聞いた話によれば、長崎県の離島で生まれた彼女は、4月から1人暮らしを始めていた。当日は友人と会い、その帰りに犯行に巻き込まれた可能性が高い。首には絞められた痕があり、死因は窒息死だった。記者の説明は続く。

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「仰向けに倒れた遺体の首にはマフラーが巻かれていて、その近くには財布入りの彼女のバッグが落ちていたそうです。顔には抵抗の際にできたと思われる擦り傷があり、着衣に乱れがあったため、わいせつ目的で襲われ、殺害されたようです」

 周辺を取材していくと、奈美さんの素朴で素直な人柄が浮かんでくる。アルバイト先のコンビニ店長は、次のように語り絶句した。

「学校の先輩に紹介されて11月からバイトを始めたのですが、仕事熱心で本当にいい子でした。いまどきなかなか見かけない素朴なタイプで、いちばん最初の給料は4日分だけだったのに、『嬉しい』と喜んでいたのが印象に残っています。今度のクリスマスに友達と過ごすのを楽しみにしていて、お正月は実家に帰るんだと嬉しそうに話していたのに……」

 小学生の頃から始めた剣道で、中学1年時には初段を獲得していた奈美さんは、やがて重い病を患い、入退院を繰り返しながら高校を卒業し、夢を抱いて飯塚市にやって来た。そこで凶行に巻き込まれたのだ。