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「去年(04年)3月ごろ、『50万円くらい貸してくれんやろか』て来たけど、その前の返し方が悪かったけん、それは断った。3回目のとき、連絡が取れんで自宅に行ったとやけど、他にも借金取りが来とるみたいでね、奥さんは『離婚したいんです』て話しよった。そのときは鈴木からすぐに電話がかかってきて、『自宅に来られちゃ困る』て、キレとったね。父親のとこにも行ったとやけど、親父さんは私の顔を見るなり『また(鈴木が)借金ですか?』て、呆れ顔やった。もう何回も同じことがあったとやろうね……」

拘置所の面会室

 拘置所の面会室。扉の覗き窓からこちらを見た鈴木は、顔を引っ込めた。続いて扉が開き、刑務官とともに私の前に姿を現す流れだ。まずはなにを訊こう。頭のなかを整理した。

 しかし……。

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 面会室に入ってきたのは、刑務官だけだった。

「知らない人なので、会わないそうです」

「そう……ですか」

 予想を裏切られたような、しかし、これこそが予想通りだったような気持ちを抱きながら、面会室を出た私は拘置所を後にした。

 05年6月22日、福岡地裁で開かれた初公判の法廷に現れた鈴木泰徳は、髪の毛を短く切りそろえ、黒いTシャツに濃紺のジャージ姿で、180センチメートル近い巨体を縮め、うなだれていた。

 検察側は冒頭陳述で、鈴木が中学生のころから女性の下着に執着して窃盗をくり返したことや、20代の半ばから強姦モノのビデオを好むようになり、自宅から同種のビデオやDVDが大量に押収されたと指摘。03年からは出会い系サイトで、見知らぬ女性とわいせつな内容の会話やメールのやり取りをしていたなど、その少年時代にまでさかのぼり、性的に異常性があることを暴露した。

 以下、公判で明らかになった犯行状況を簡易に記しておく。