ところが、その調書には、なぜか13日の失踪直前に母親と爽彩が大ゲンカしたことになっており、それが原因で爽彩は家を出て行ったと書かれていたのです。母親が『ケンカなんてしていません』と話しても、警察は『申し送りでそうなっています』と答えるのみ。なんでこんなことに……と母親は考えた結果、思い至ったのは前日に警察に話した『パソコンの出来事』でした。しかし、あの時、爽彩の機嫌が悪くなったり、泣いたりということはなく、普通に元気なままだったそうです。
「噓を書かないでください」と泣きながら警察に抗議
母親が改めてそう警察に話し、『どうしてケンカにしたいんですか? 嘘を書かないでください』と泣きながら警察に抗議をして、ようやく警察は調書を書き直したそうです」
爽彩さんがどこへ行ったか手掛かりを掴めないまま、警察による大掛かりな捜索は失踪から2日目で打ち切られた。それからも爽彩さんの親族や協力者は彼女の写真と特徴を記したビラを札幌まで行って配るなど必死の捜索を続けた。極寒の旭川の夜に財布も持たず、パーカー1枚で出て行った爽彩さんを心配する母親を見かねた知人は、それから3週間後、縋る思いで地元のメディア「あさひかわ新聞」で情報提供を呼びかけた。同紙2021年3月9日号の事件・事故欄には爽彩さんの写真とともに「行方不明になりました 情報をお願いします」という見出しで以下の記事が掲載された。
〈二月十三日午後六時半から八時ころに、自宅を出たまま行方が分からなくなりました。名前は、廣瀬爽彩(ひろせさあや)。二〇〇六年九月五日生まれ。十四歳。身長百六十センチくらい、中肉の体型。血液型はB型です。髪型は、写真よりも少し長め。真面目な性格で、少し臆病です。家族から捜索願が出され、警察犬が☓☓☓☓まで追跡しました。パワーズで目撃したとの情報が最後です。小さな情報でも構いません。旭川東警察署(☓☓―☓☓☓☓)までお知らせください。〉
記事掲載直後、母親の携帯電話に警察から連絡が入った。
「『なぜ探しているという情報を勝手に載せたのか。載せるなら警察の許可を取ってください』と、厳しく注意を受けたそうです。確かに、警察署の電話番号まで載せる以上は、相談する必要があったかもしれません。しかし、一人娘が行方不明となっていて親が何もしないでじっと家にいるなんてできませんよ。失踪から2、3週間が経ち、僅かな情報でもほしい、もし爽彩が誰かと一緒にいるなら懸賞金を出せば情報をくれるんじゃないかという思いで、母親はその注意を受けた電話のあとで『お金はこちらで用意するので、有益な情報を提供してくれた人に謝礼金を出せないか』と警察に相談しました。