文春オンライン

中学時代は子分を引き連れてケンカばかり…『スクール☆ウォーズ』のモデルになった「京都一のワル」とラグビーとの“運命的な出会い”

『伏見工業伝説 泣き虫先生と不良生徒の絆』より #1

source : 文春文庫

genre : エンタメ, スポーツ, 読書

note

 譲り受けたスパイクを履き、翌日から山本はグラウンドに立った。だが、すさんだ生活はなかなか抜けず、長続きはしなかった。中学時代の悪友からの誘いは絶えず、バイクの暴走や麻雀、飲酒、ケンカに明け暮れる。家に帰るのはいつも朝方になった。高校に進学しても、練習どころか、学校に顔を出すことすら、少なかった。

「昼過ぎまで寝て、みんなが帰る頃に学校に行く。ラグビー部に入ったと言っても、最初はそんな状態やった」

 すると、毎朝、山口が家に来るようになった。阪急電車の桂駅近くに住んでいた山口は、四条河原町で京阪電車に乗り換えて学校へ向かう。電車を乗り継ぐ際に、鴨川を渡り、ひと駅だけ反対方向に行くことが日課になった。京阪三条駅からほど近い、山本の家を訪ねる。父親は朝早くから仕事に出かけていたから、玄関を開けてズカズカと部屋に上がり込むと、布団をめくり上げて叫んだ。

ADVERTISEMENT

「清悟、はよ起きんかい! 学校に行く時間やぞ」

 明け方まで遊び歩く習慣がついていた山本は、すぐに制服に着替えさせられ、一緒に電車に乗って学校に連れて行かれた。途中で喫茶店に寄るようになり、2人でモーニングを食べた。2枚あるトーストの1枚を、山口はそっと清悟の皿に載せた。

山本清悟氏と山口良治氏(2006年時) 写真=山口良治氏提供

「お前は食べ盛りなんやから、俺の分も食べろ。体をデカくせなアカン」

 教師と生徒という関係を超えたものが、そこにはあった。それは、より親父と息子に近いものだった。山本だけでなく、自分が育ててきた生徒全員に、そうやって、山口は愛情を注いできた。

【続きを読む】「耳の半分がベロンとはがれていました」不良ばかりの弱小ラグビー部が名門・花園高校と繰り広げた“死闘”の行方

中学時代は子分を引き連れてケンカばかり…『スクール☆ウォーズ』のモデルになった「京都一のワル」とラグビーとの“運命的な出会い”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春文庫をフォロー