あらゆるものに似ている表現を目指したい
――「DIVA ME」の感想で、うれしかったものや意外なものは他にありましたか?
「DIVA ME」って、聴いてくださる人によって想起してくださるアーティストさんの名前が本当にバラバラなんです。藤井隆さん、ハロー!プロジェクトやつんく♂さん、浜崎あゆみさんなどのエイベックス系の方や、海外の「DIVA」もありました。それがすごくうれしかったですね。というのも、それは私が表現としてずっと目指しているものなので。
4、5年前、映画監督の山戸結希さんにラジオで相談したことがあるんです。「自分は好きなものがたくさんあるけれど、結局それらの影響下にある表現しかできていない気がする。そんな表現に意味があるのかと考えると、何をしたらいいのかわからなくなるんです」と。そうしたら、山戸さんはすごく丁寧に答えてくださったんです。
山戸さんがはじめて映画を発表した時、洋邦問わず多くの映画監督の名前を挙げて「似ている」と評されて、「でも○○と××の作風が合わさったものは初めて見た」と言われたらしいんですね。そこで、「似ている」って本当は一番すごいことなんじゃないかと考えるようになったらしくて。全てに似ている芸術は、全ての人の郷愁に触れられる。だからそのジャンルの全ての先人たちに似ている芸術を目指したらいいんじゃないでしょうか、とおっしゃったんです。
その当時の自分には、到底すぐに実現できることではなかったのですが、この言葉はずっと覚えていました。だから今回、いろんな人の名前を挙げてもらえたことで、山戸さんに言われたことの第一歩を踏み出せたような気がして、すごくうれしかったです。しかも自分が意識している方以外のお名前の方が多いくらいなんです。新しさを志向しながら、既存のいろんなものと良さが共通しているのは、芸術にとってすごく価値があることだと思います。そして、好きな人やものがたくさんあることって本当に最高だなって思います。
――ゆっきゅんさんが意識して「DIVA ME」に取り入れたものもたくさんあるのでしょうか。
初めての曲だから、自分が好きなものを全部ぎゅっと詰め込みました。取り入れた、というのではなくて、私の心の血肉になっているあらゆるものからの影響が滲み出ていると思います。私、最大公約数って言葉は嫌いなんです。ずっと、足せよ、かけろよって思っているんですね。これは、まさに「足してかけた」曲です。