「最後くらいそういう風にしてあげたい」
祖父母宅に戻ると、玄関からキッチンに行って2人が死んでいることを確認した。その後、和子の部屋へ行った。和子の部屋の奥のふすまはいつも閉まっていたため、ふすまを隔ててキッチンとつながっていることを、優希は知らなかった。不意にふすまを開けるとそこはキッチンで、倒れている達夫の顔と和子の手が見えた。優希は「見たくないものを見てしまった」と思い、近くに積んであった空き箱などを遺体の上に散らかして顔を覆い隠し、ふすまを閉めた。(空き箱は、菓子が入っていたものなどを和子が捨てられずにためていたものとみられる)
家賃として支払うために和子が準備しておいた金などを探し、キャッシュカードや売って換金できそうなものを盗って家を出た。その際、家の鍵がどこにあるか分からず、外からチェーンを閉めた。(玄関ドアに歪みがあったため、外からチェーンを閉めることができ、和子が外出時に防犯のためによくそうしていた)
優希は和子がよく外からチェーンを閉めているのを知っていたため、「最後くらいそういう風にしてあげたい」となぜか思った。
キャッシュカードで金を引き出しカラオケ店へ
公園に戻ると、幸子は優希が持つ盗品に視線を向け、「あった?」と聞いてきた。優希はその場では盗ったものを見せず、「カードの暗証番号は分かる?」と幸子に聞いた。幸子は「分かるよ」と答え、近くのショッピングセンターに行こうと言った。その時に優希に、着ていた服を処分するように指示した。
ショッピングセンターに着くと、幸子は優希に「震えているよ」と言って飲み物を渡してきた。幸子が「カードを試してみれば」と言うので、優希は暗証番号を教えてもらい、金を引き出した。祖父母宅から持ってきた現金と引き出した金の合計金額を幸子に伝え、川口市から荒川を隔てた対岸にある東京都の赤羽に移動するため幸子がタクシーを呼んだ。
赤羽に着くと、3人はカラオケ店に入った。その後、幸子だけカラオケ店を出て、ホテルを予約するために近くの漫画喫茶に行った。優希はカラオケ店で結衣に食事をさせ、達夫と和子を殺害したことを忘れたい一心でカラオケを歌った。
幸子がカラオケ店に戻り、3人でホテルへ移動した。幸子は「タクシーで行こう」と言ったが、優希は無駄な金を使いたくなかったので「電車の方がいいんじゃない?」と促すと、幸子は渋々承諾し、電車で行くことになった。