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同世代の中堅選手Cと協力して八百長を……

〇ケース1 「先にくれたら2回する」と持ち掛けた中堅選手C

 西川は九州地区のレース場で開催されたシリーズに出走し、最終日の翌日、関係の深い同世代選手Cと飲みにいったという。

<結局、今日もCと飲んどるんやけど後いくらくれるかによって1でやるって笑 値段言ってないで倍くれるなら1と俺と一緒になったら飛ぶとか言うとる やりそうやな!>(西川)

 

<倍て、先に渡した50にあと50って事か?>(増川)

 

<うん 先くれたら二回するって言うとる。とりあえず聞いてみるって言うたけど>

 

<二回は俺と一緒やった時な!>

 

<今回みたいに一緒にならん可能性もあるけど>(西川)

 

<1人でもインなら1回は、やるんか>(増川)

 

<インはやるって 値段言うてなかったで倍くれたら俺と一緒になったらその時もいいよって!>(西川)

 

<ほな今から50振り込んだらエエんか>(増川)

 

<OK それなら今渡す 〇×(筆者注:レース場名)の前泊また作戦会議って言うて一緒に泊まるで一応その時紙書かす?>(西川)

 西川は、私生活上の変化で金銭が必要になっていたCから「報酬を倍にするなら八百長をしてもいい」と持ち掛けられ、すでに渡していた50万円に加え、さらに50万円を渡すかどうか、増川に相談している。

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「1」「イン」とは有利な1号艇が回ってきた場合を指す。競艇では最も内側からスタートできる確率が高い1号艇が本命になるケースが多いため、不正をする場合は1号艇のときにあえて着外に沈み、高配当を狙う戦略が基本となる。

最も内側からスタートする1号艇はレースにおいて本命になることが多い。だがそれは「八百長」
の好機でもある

 また「俺と一緒やった時」とは、同じレースに西川とCが出走(競艇は6艇によって着順が争われる)する場合を指す。単独の八百長は自信ないが、西川との連携八百長なら、リスクも罪悪感も半減するというところだろうか。

不正に同意したのは、Cの他に少なくとも5名

 その後、Cが本当に不正をしたかどうか、それを直接示すやりとりは確認できない。検察が調書に添付したこのトーク履歴は、あくまで西川自身の不正の証拠であり、他の選手の不正についてやりとりされた部分はLINE履歴から摘出されていないのである。

 ただし、西川が不正を持ちかけ同意を得た可能性のある選手は、Cの他に少なくとも5名おり、証拠資料のLINEに実名で登場する。そのなかには、艇界最高グレードのレースである「SG」の常連選手2名も含まれる。

 西川は、口座を管理している増川から分け前(利益の5割)以上のカネを引っ張るため、しばしば「八百長の対価として前金を渡す」として、実際には不正を約束していない選手の名前を出し、増川に現金を要求していた。このことは、西川の手記にも書かれている。

共犯者の増川はレースの資金配分を図表化し計算していた

 従って、名前が出てくる選手がすべて不正をしていたと断定することはできない。だが、Cをはじめとする選手が全員「シロ」だという証拠はない。なかには極めて不正の疑いが濃い選手もいる。(#2へ続く)

競艇と暴力団 「八百長レーサー」の告白

西川 昌希

宝島社

2020年11月2日 発売