自身が出走するレースでわざと着順を落とし、高額配当を演出。そのレースの舟券を親戚経由で購入する――。ボートレース界でそんな手法の「八百長事件」が起きていたことが、昨年1月各紙で報じられた。ボートレース界“史上最大の不祥事”とも言えるこの事件は、各所に大きな衝撃を与えた。

 事件の中心人物として逮捕されたのは、全盛期には年間2500万円ほどの賞金を稼いでいた一流選手。だが、彼が捕まったことで、ボートレース界の“闇”がすべて晴れたわけではなかった。事件後の取材で分かった、競艇界の“八百長のリアル”とは――?(全3回の2回目/#1#3を読む)

実力は一流と認められていた西川。不正をする前には年間2500万円の賞金を稼いでいた

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朝イチで八百長「中止」の電話

〇ケース2 レース開催中に西川に電話をかけた選手D

 あるシリーズに出走していた西川は、密かに持ち込んだスマホから増川に次のようなLINEを送っている。この日、別のレース場に参戦していた30代前半(当時)の選手Dから、電話がかかってきたという内容だ。

<Dから今朝朝イチで管理に電話あって今日後半中止でお願いしますって上手い事電話がかかってきた 公正課にDのインで飛ぶ時がスタート遅れでやる気がないって垂れ込みがあったらしくて最終日の次の日呼び出しされたらしい>(西川)

 

<了解、中止な>(増川)

 前述の通り、選手は出走するシリーズ(4~7日間程度)の間、外部との通信は禁じられている。しかし、緊急の場合や必要と認められた場合には、申請して許可を得れば電話をかけることができる。当時、電話の許可はさほど厳しいものではなく、ゲームのログインボーナスを獲得したいがために、許可申請して私物のスマホを操作する選手もいたという。

 この日、西川とDはそれぞれ別のレース場で出走していたため、お互い電話をかけることも受けることもできない状態にあったはずだが、Dは自身が参戦していたレース場の管理室から西川が出走しているレース場の管理室に朝、電話をかけ、西川に連絡したという。