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 増川は、Dに金を貸しているという。さらに、やりとりが続く。

<オッズ見てみるけど、こいつ自分でしてへんか!>(増川)

 

<おかしいな とりあえず明日電話かかってくるで話するわ 向こうでやっとったらなめすぎとるけど金があるとは思えやんけどな これだけオッズ動かすの相当金いるやろ?>(西川)

 

<アカンな! これは裏切っとる可能性が有るな! 2からの売れ方が怪しい! 2に差させるつもりのスタートやろ! あんな連絡してきて、こんなにスタート遅れるか?>(増川)

 自分たちで八百長をしている増川が「2からの売れ方が怪しい!」などと憤るのもおかしな話なのだが、Dが独自に利益を確保するために「今日は八百長はしない」と西川・増川に信じさせ、舟券購入を止めさせた可能性はある。まさに「仁義なきだまし合い」だ。

自分たちとは無関係の八百長にも精通

 その後、西川とDの間でどのようなやりとりがなされたのかは残念ながら分からない。もちろん、このときDがガチンコでレースに臨んで負けた可能性もなくはないが、Dに関してはその後も頻繁に西川・増川間のLINEに登場し、不正前提のやりとりがなされているのを見ると、Dが潔白であると信じるのは難しいと言わざるを得ない。

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 Dが「裏切った」と判断した増川はその後もDが出走するレースを監視し、その2ヵ月後にはDが1号艇で出走したレースを事前に「八百長」と察知。Dを外した舟券に400万円を投資し、狙い通りDが飛んだために900万円以上の払い戻しを受けている。Dが八百長選手であるとの確信と情報がなければ、グレードの低い一般戦のたった1レースに400万円もの大金を賭けることはまず不可能だろう。

増川が調書で告白した「疑惑の選手」は多数登場する

〇ケース3 他の八百長選手を狙う「ハイエナ」作戦

 西川と増川は、自分たちとは無関係に八百長をしている選手、グループの情報に精通しており、出走前のオッズの変動を見極めることによって、そのレースに投票し実際に利益をあげていた。いわゆる「ハイエナ作戦」だ。

 逆に、西川が単独で実行する予定の八百長レースが、事前に何者かに察知されているのではないかと増川が疑っていたこともある。増川が舟券を買う前の早い段階(レース出走の数十分前)から、西川を外した組み合わせが大量に買われるなどの動きが実際にあったのである。

 もっとも、そのことはまったく不自然ではない。ある時期から、西川の不正疑惑は一部の匿名掲示板などでも度々指摘されており、そうした情報に触れた人間が、西川が不正に走りそうなレースを特定し「ハイエナ」していたとしてもおかしくないからだ。