ベテラン選手Eの八百長「Eターン」
八百長ベテラン選手Eは「外側の艇に差されやすいオーバーターン」の名手だ。スタートこそ普通に行くが、1周1マークでインから思い切り外側にふくれるターンを決め、大きく空いた内側を外枠勢に差させ、高配当に導く。同じ八百長でも、スタートでドカ遅れする方法よりは怪しまれにくいため、増川も「Eターン」と高く評価して、西川にその手法を推奨していた。
この日、西川はあるレース場で八百長をする予定だったが、出走レースの締め切り10分前の段階で400万円しか売上がなく(総売上額はリアルタイムで表示される)、利益が出ないと判断し、直前になって急遽八百長を取り止めていた。西川は大胆にもピットに携帯を持ち込み、レースの合間にも増川と通信していた。
そこで増川は別のレース場で1号艇に組まれていたEのオッズに注目する。
<Eのレース、仕事とみて180はったぞ>(増川)
<おー仕事しとるやん>(西川)
<まだ結果見てないわ散歩しとるで!>(増川)
<良く見抜いたな>(西川)
このレースでEはインコースからシンプルにコンマ30台の非常に遅いスタート。首尾よく5着に沈み、インが負けたことで配当は「万舟」(100倍以上のオッズ)となった。
4万円購入で、500万円以上もの払い戻し
<ビックリや♪ 4万取ったで。津で損した分入れて元引いても、180有るぞ>(増川)
<うぉー 仕事より一番テンションあがったわ笑 ありがとう>(西川)
Eを外した3連単の的中券を4万円購入していた増川は、500万円以上の払い戻しを得た。180万円の投資金と、その前に津競艇場で八百長に失敗した損失を差し引いても180万円の利益が出たという。西川は自分自身で八百長を成功させたときよりも「テンションがあがった」と喜んだ。
このやりとりは、八百長選手を特定した第三者が、選手の知らないところで大きな利益を上げている実態を示している。Eとその共犯者(舟券購入担当者)は、本来もっと手にしていたはずの利益を、西川・増川に抜かれていたことになる。
ここまで紹介したLINEのやりとりはごく一部であり、他にも決定的ともいえる「不正実態」が明らかにされている。