人間は、機械じゃない
丹羽 オンラインで済むことが増えれば増えるほど、藤井さんが今持っているような、将棋に対する考え方や雰囲気というものが重要になってくると思うんです。これはなかなか教えられないものなんですよね。だからどうすると「第二の藤井聡太」が生まれるのかなと、僕は思っているわけです。
やはり人間は、機械じゃないんです。人間の雰囲気は、家族や周囲の人たちとの関わりを通してしか得られないものなんですよ。最初にお話しした通り、人と人が対面するからこそ、伝わるもの、得られるものがある。そして最終的に、それがいちばん人間の強さに直結するんです。人間がAIから得られるものとは、全然違うと思います。
藤井 今はAIがすごく強くなったことで、より多くの人にとって効果のある上達法が、これからもしかしたら確立されてくるかもしれないとは思います。ただそれで皆が同じように強くなれるかというと、やはりそういうわけではなく、最終的には個人の、ちょっとした工夫であったり、自分なりの考えだったり、そういうところが最終的には問われる部分なのかなと思います。
丹羽 そうですね。AIをどう活用し、どう自分の力にするか、それはもう個人によって違いますよ。その部分は、僕も非常に難しいような気がします。
スマホは長時間は使わないほう
藤井さんの世代は一般的に、毎日の生活のなかでネットを利用している時間がものすごく長いそうですけど、藤井さんはどうです?
藤井 中学一年生の頃からスマホは持っていますが、基本的には将棋関連で使っています。それ以外でも多少は使いますが、そこまで長時間は使わないほうでしょうか。ネットゲームやテレビゲームも、とくにしていません。そういえば、2020年4月の緊急事態宣言で高校が休みになったときは、少しだけNintendo Switchのマリオカートをしました。
丹羽 棋士の皆さんも、SNSやYouTubeなどで情報発信をする人も増えているんでしょう?
藤井 はい。今のところ自分は向いていないと思うのでやっていませんが、いつかは、渡辺明先生や佐藤天彦先生のように、自分の指した対局の振り返りなどをメインにやってみたいな、とは思っています。
【前編を読む】「自分のイメージでは、研究者7、勝負師2、芸術家1ぐらいかな」藤井聡太二冠が語った自身の“棋士像”…その真意は?