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2017/11/10

プライベートジェットで検診に来た大富豪

――どういう経緯で、医療ツーリズムで起業することになったんでしょう?

 もともと、在日中国人向けの起業支援の会社をやっていたんですよ。そうしたら、知人を介して「中国の高級官僚の友人が仕事で日本に来る際に、ついでに検診を希望している。日本の病院を紹介してくれないか?」という話があって。

 最初は一度きりの病院探しの手伝いのつもりだったのですが、似たような問い合わせがあまりにも多かったので、思い切って事業にしてしまいました。事業化は2012年のことです。

Nihonのホームページ。豪華ルームで中国人検診者をお迎えする。

――中国の高級官僚が自由に出国できた胡錦濤政権のころですね。しかし2013年の習近平政権の成立後は、綱紀粛正を理由に高級官僚の出国は禁止されています。

 そうなんです。なので、2013年ごろに顧客は官僚から富裕層の民間人にシフトしました。最初はめちゃくちゃお金持ちの方が多かったんですよ。プライベートジェットでやってきて、ボディーガードが5~6人付いていて……みたいな。

――それって、どういう業種の方なんですか?

 不動産とか資源関係の企業のトップですね。個人の資産を数十億は持っている方。しかし、2013年当時はそういう超富裕層の方ですら、中国では人間ドックを受ける習慣があまりなかったんです。

――「数十億」って、日本円ですか? 人民元(日本円で数百億円以上)ですか?

ボディガードが寿司やフルーツを差し入れ

 もちろん人民元です。買い物に行くときも、「お店の棚の“ここから、ここまで”」みたいな、ものすごい買い方をする人が多かった。病院でも、ただ検診を受けるだけなのに、ボディーガードたちが寿司やフルーツを差し入れして……。

――外部の食べ物を持ち込んで大丈夫だったんですか。

 いや。それでボディーガードの人たちが病院の人に叱られていました(笑)。その日、例の大富豪氏は大腸の内視鏡カメラをやっていたんです。なので、「ボスは前日からずっと何も食べてない」と心配して、差し入れをどっさり。そこは総合病院だったので、他の患者さんからクレームが出ました。

――中国人の訪日客というと、実態を知らない日本人はすぐに「マナー問題」を連想してしまいがちですが、そういうことをする方は多いんですか?

 いえ、彼だけでした。むしろ、これまで事業を5年間やってきて、現在は年間1000人くらいのお客様を受け入れていますが、いわゆるマナー問題が表面化したのはこの件だけなんですよね。

――年間1000人ですか。まさか全員プライベートジェットで来るとか?

 いや。ここ数年は大富豪のお客様は減っています。むしろ「普通の富裕層」の方や、さらに一般市民層の方が増えていますね。中国国内でも海外医療ツーリズムの存在が認知されるようになって、ちょっとお金に余裕があるくらいの方でも海外に検診に行くようになったし、難病治療を目的に一般市民の方も海外に出るようになった。