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 一つはアルカイダというテロ組織で、もう一つはタリバン政権という国家を名乗っているけれども、国際社会に認知されていない政治運動体でした。特に前者に対して武力行使を行うことで、本当にテロを撲滅できるのかというのは大きな疑問だったと思います。

 また、その後の歴史の展開を見ると、この時の「対テロ戦争」という形は、中国とロシアにはさんざんいいように使われた。中国はウイグルの弾圧を「テロとの戦い」を理由に拡大させ、ロシアはチェチェンやダゲスタンのイスラム勢力の掃討にこの論理を使うようになる。テロとの戦いと言いさえすればすべてが容認されてしまう「聖域」を作り出してしまいました。

「テロとの戦い」は“聖域”化したことでロシアや中国に利用されてしまったという(写真はロシアのプーチン大統領) ©JMPA

なぜタリバンは「衰えない」のか

高木 この30年くらいの間、世界各地にさまざまなイスラム主義の暴力的な勢力が登場しました。「アルカイダ」、「IS」やその分派組織、あるいは東南アジアにおける「ジェマ・イスラミア」など、それぞれ栄枯盛衰をしてきたと思います。その中で、タリバンは息が長い。1994年に突然アフガニスタンに現れた謎の「神学生たち(=タリバン)」は、1996年の首都占領から5年間「タリバン政権」をアフガニスタンに作りました。その時と同じような雰囲気の、メンバーも重なっている人たちが2021年まで続いてきて一気に復権したわけです。その「長持ち」の原因についてどう思われますか?

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田中 それは、彼らの意識がブレないからだと思います。客観的に見て正しいかどうかは別にして、90年代の時も現在もそうですが、アフガニスタンは「外国軍によって占領されている」という認識を彼らは持っています。その占領から解放するために、自分たちは立ち上がり戦っているのだという思いがある。ある種のナショナリスティックな、民族主義的な運動として勢いを保つことができるのです。

 そして、ここはまた非常に厄介な問題なのですが、それを支えるパキスタンという国家の存在があるわけです。パキスタンは2001年の時もアメリカに対して面従腹背でしたし、それ以降はどんどん中国になびいていくことによって、面従腹背以上にアメリカのコントロールの及ばない状態になっている。この隣国がタリバンをかくまい、隠れ家を提供し、食事も与えて、医療も与えて、偽のパスポートまで発行して、場合によっては武器も提供していたのだろうと考えられています。

高木 外国勢力からの祖国防衛という考え方は、アルカイダやISなどの「グローバルジハード」的な考え、つまり彼らの言うところのキリスト教徒とユダヤ教徒の連合軍に対して世界で戦いを仕掛けていくというコンセプトより、強い共感を得られるということでしょうか?

田中 そうですね。ある種の地場勢力としての強さはあります。例えばISのケースは、世界各地で様々な領域を占領していきますが、結局ISは歓迎されなかった。ISは外からやってきて、占領された人々は迫害されたり、場合によっては殺されたりしたわけですから。