9・11同時多発テロから20年。テロを首謀した外国人オサマ・ビンラディンをかくまったことでアメリカの攻撃を受け、政権崩壊に至ったはずのアフガニスタンの「タリバン」だったが、彼らが生きながらえて勢力を回復したことで、事態は今回の復活劇へと急展開している。

 著書『大仏破壊 ビンラディン、9・11へのプレリュード』(文春文庫)で、タリバンの内情を詳細に描いた高木徹氏が、9・11に至る前の数年間、国連アフガニスタン特別ミッションの政務官として、今回の組閣で首相に選ばれたアフンド師をはじめ、30人を超えるタリバン幹部たちと交渉を行ってきた田中浩一郎氏(現・慶應義塾大学教授)に、現在のタリバンをどう見るかを聞いた。(全2回の2回目/#1から読む

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「結局、タリバンは戦闘集団。力がすべての“ヤクザの世界”ですから」

高木 8日に発表されたタリバンの「組閣」の内容をどう見ていますか?

田中 まだ最終承認でないと示すためか大臣「代行」という言い方ですが、正直言って、それを見ると行政機構としては機能するとは思えません。そもそも、字が読めるかどうかも分からないようなメンバーがあてがわれていますから。

高木 以前からタリバンには「強硬派」と「穏健派」がいて、表に出てくるのは「穏健派」だが、結局は「強硬派」が力を持っていると捉えられてきました。

田中 「強硬派」というよりは、私は「武闘派」と呼んでいます。力がすべての世界、いわば“ヤクザの世界”ですから。米軍を追い出したいま、その「武闘派」の意見が強いことは間違いありません。

タリバンのナンバー2と称されているバラダル師 ©AFLO

 今回「首相」になったアフンド師は、前回の政権では外務次官から外務大臣になった人で、私は10回以上会っていますが、彼の口から教条的な原則論以外のことを聞いたことがありません。いまよくメディアに登場しているバラダル師も、「武闘派」として鳴らしていました。今回の組閣では副首相という微妙な役職ですし、米軍が撤退した以上、タリバンにとってこれまで彼がやってきたようなアメリカとの交渉はもう必要がないということでしょう。

 副官の一人だったハッカーニ師が内務大臣というのはブラックジョークのように思えます。彼はいわば“狂犬”のような存在です。アルカイダともつながっていると言われますし、これまで国内でも爆破テロとか暴力行為をやってきていた人が、これからは治安の維持を担当するというのですから。

 創設者オマル師の息子で今回国防大臣になったヤクブ師は知り合いではありませんが、少なくとも軍事委員会のヘッドだったということは、話し合いで物事を解決しようとする人ではないでしょう。つまりタリバンの上層部は「武闘派」によって占められている。結局、タリバンは戦闘集団なのです。戦闘で相手を打ち負かすことを、いの一番に考えている。

 その彼らの第一のミッションは外国勢力を駆逐すること。第二のミッションは、アフガニスタンをシャリーア(イスラム法)に基づくイスラム国家に戻すことです。