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転職後に親会社が倒産、起業した会社もあわや連鎖倒産… 45歳で退職した元大企業社員が、新浪社長の「45歳定年制」に思うこと

2021/09/18
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45歳で大手企業を退職した私の場合

 私自身、45歳で大手企業を退職して、新興系の会社に転職した。そして50歳で独立起業をした。結果論と言われるかもしれないが、今振り返っても一つの会社組織の中に45歳を超えて所属することは、自分の能力開拓にはつながらなかったと確信する。

 当時の私にとって、給料の良い大手企業を退職する理由はなかった。会社で何か失敗をしているわけでもなかった。むしろ業界では最先端の仕事を与えられそれなりに充実した日々だった。だが45歳を迎えた日、私の頭をよぎったのは次のようなことだった。

 私は当時の会社には中途採用で30歳の時に入社した。最初に入った金融機関が肌に合わずわずか3年で退職。外資系コンサル会社で3年半修行のうえ得た職。以来15年間、会社の水があったようで、多くのビビッドな仕事をし、それなりの評価をもらい満足してきた。45歳ということは残りの会社人生、定年が60歳としてあと15年。自分はこれまでの15年と同じようにこの会社で楽しい15年を過ごせるのか真剣に考えてしまったのだ。

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45歳からの15年間を考えてみると

 おそらくそれなりの待遇で恙なく会社人生を終えられたのだろうが、これからの15年は自身の成長というよりは、我慢することが増えるのではないかと思えた。管理職などというと聞こえは良いが、上だけでなく下からもプレッシャーを受ける。同期生やその前後との壮絶な出世競争もそろそろ終盤戦。出世にはおのずと限界がある。そんなに悪い日々ではなくとも、自分がやりたいこと、磨きたいことを本当に実現できるか見えなかったのだ。このまま組織に従属し、多少不合理なことでも我慢して飲み込んで、生きるのだったらこれからの15年はあまり楽しくなさそうだ。このまま会社にいるのならば、何か仕事とは関係のない趣味でも持たなければ時間の経過が長すぎる。高校生の子供達には、挑戦しろ、といっている自分が挑戦もせずに組織の中で燻るのはカッコ悪いとも考えた。

 結論は、2人の子供の大学での教育資金だけを確保して転職した。住宅ローンはまだだいぶ残っていたが、返せなければ売却すればよい、と割り切った。