年金代わりに、企業に定年延長を強いる日本
だが平成以降の30年間にわたって、日本企業は世界において敗北の連続となった。世界の企業の時価総額ランキングにおいて、1989年(平成元年)には上位30社中、21社が日本企業によって占められていたが、現在では米国、中国企業に席巻され、1社もランクインしていない。それどころか、今年8月末にはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の株式時価総額の合計が東証全体の株式時価総額を上回るほど、日本企業は世界経済の成長からおいてけぼりとなっている。
そのいっぽうで、国の年金制度は風前の灯火である。支給額は先細りの一途にある中、今後も支給年齢の繰り下げが避けられない事態となっていることは自明だ。そこで打ち出されたのが定年制度の延長だ。現在は60歳定年を前提に65歳までの雇用を企業側に義務付けているが、これを70歳、あるいは75歳まで延長していかなければ、制度が維持できないのだ。いわば年金支給の一部を国が企業に押し付けているのが実態だ。
定年延長は企業を苦しめる大きな負担
ただでさえ、世界の企業との激しい競争に巻き込まれている多くの企業にとって、定年制の延長は人件費負担の激増となる。ソフトウェア、情報通信など時代の最先端を走る企業では、優秀な若い人材により多くの報酬を用意したくても、人件費総額が膨らむ中、それらの人材をアジアなどの外資系企業に奪われている。
世界各国でも定年制を導入している国は多いが、日本ほど社員を解雇することが極めて難しい国は少ない。そうした手かせ足かせを設けられたうえで、定年をどんどん延ばしていくことは、日本企業をさらに苦しめることにつながる。
これを「中高年をもっと育てろ」だとか「65歳すぎても生き生き働く社会に」といった美辞麗句を使って企業に強制することは、国全体の成長力をそいでいるともいえるだろう。
そうはいっても45歳定年は暴論だろう、という声が聞こえてきそうだ。ただ、定年という言葉だけが一人歩きしている感があるが、実は正論である。