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特集観る将棋、読む将棋

2021/09/16

息つく間もなく死闘が繰り広げられた2000年度の羽生

 では「過去に最もハードスケジュールだったのは?」と考えると、まず思いつくのが年間最多対局の89局(68勝21敗)を記録した2000年度の羽生である。中でも7~9月の3ヵ月が凄まじい。

・7月、10局(連戦が1度、中1日が2度)8勝2敗
・8月、11局(連戦が1度、中1日が5度)9勝2敗
・9月、11局(連戦が2度、中1日が2度)8勝3敗

 上記ではいずれにも含んでいないが、8月31日と9月1日も連戦している、そして7月31日と8月2日を中1日で指している。この間、棋聖戦と王位戦ではいずれも谷川浩司九段を相手にフルセットの激戦を繰り広げ、挑戦者決定トーナメントを勝ち上がった竜王戦では佐藤康光九段と挑戦者決定戦を争い、谷川との死闘が終わったと思ったら息をつく間もなく、藤井猛九段との王座戦及び竜王戦の十二番勝負が始まるという按配である。

羽生善治九段 ©文藝春秋

藤井聡太が最も破りにくい羽生の記録

 ちなみに、羽生は自身が持つ記録の中で藤井聡太が最も破りにくいであろう記録として、この年の年間89局を挙げている。その理由は、現在なくなっているオールスター勝ち抜き戦の存在だ。勝てば勝つほど対局が増えるこの棋戦で、この年の羽生は16連勝を達成しているが、上記の7~9月の3ヵ月で8つの白星を稼いでいる。

 今年度ここまで31局(26勝5敗)の藤井が今後、年度末までにどこまで対局を積み重ねられるかを概算してみたが、最大でも50局ちょっとなので、89局には至らなそうである。

 なお、羽生九段は、藤井が対局数を破れないであろう理由のもう一つに「タイトル保持者となったので予選を指す機会がない」ことを挙げているが、当時の羽生が予選と名のつく対局を指した回数は「ゼロ」なので、こちらはちょっと説得力がない。

 そして、過去の年間80局を達成した棋士と、その中で一月に10局以上指した例は以下の通りだ。

・米長邦雄、1980年度、88局(55勝32敗1持将棋)
 7月、10局、7勝3敗
・谷川浩司、1985年度、86局(56勝30敗)
 11月、12局(連戦が2度、中1日が3度)、6勝6敗
 12月、10局(連戦が2度)、6勝4敗
・佐藤康光、2006年度、86局(57勝29敗)
 12月、10局(連戦が1度、中1日が5度)、5勝5敗
・中原誠、1982年度、82局(52勝30敗)
 12月、12局(連戦が2度、中1日が5度)、6勝6敗
・羽生善治、1988年度、80局(64勝16敗)
 月10局以上は1度もなし