藤井聡太の勢いが止まらない。お~いお茶杯王位戦と叡王戦では豊島将之竜王とのダブルタイトルマッチを制して自身初の三冠に。さらに竜王戦挑戦者決定戦で永瀬拓矢王座を下して、こちらでも豊島との七番勝負が始まる。王将リーグにも復帰しており、目下のところ、指す将棋をすべて勝っているような状況である。
1対局に最低3日は用意したいところだが…
そうなると、心配されるのはハードスケジュールだ。勝てば勝つほど忙しくなるのが将棋界の常なので、こればかりは仕方がないところだが、外野が気をもんでしまうところでもある。
筆者がいろいろな棋士に見聞きした限りでは、対局前日は空白にして翌日に備える。そして、対局翌日は疲労でほとんど使い物にならない、というケースが多いようである。無論、その対局に要した時間などでも状況は変わってくるだろうが、当日を含めて1対局に最低3日は用意したいというのが棋士のリズムだろう。
そうなると、1週間に2局以上指すペースはハードスケジュールと言えそうだ。最近の藤井は6月が7局、7月が7局、8月が9局、9月が叡王戦第5局終了時点で2局(未放映のテレビ棋戦を除く)となっている。この数字だけを見るとハードスケジュール一歩手前という感じだが、この夏の藤井はタイトル戦の対局が多かったため、1局に拘束される日数がより多くなっている。さらには、公式戦ではないとはいえ、ABEMAトーナメントの生放送もあった。
将棋界におけるハードスケジュールについて、改めて考えてみたい。
現在のタイトルホルダーの月間最多対局数
まず、現在のタイトルホルダー4名がもっとも忙しかった1ヵ月というのはいつだったのだろうか。それぞれの月間最多対局数及び勝敗、それを記録した年月は以下の通りである。
・渡辺明名人=8局
2008年12月(6勝2敗)、2020年2月(4勝4敗)
・豊島将之竜王=9局
2018年3月、6勝3敗
・藤井聡太三冠=11局
2020年7月、9勝2敗
・永瀬拓矢王座=9局
2020年10月、7勝2敗(同年9月に8局指し、4勝4敗)
こう見ると藤井の月間11局というのは出色だ。ちなみに敗戦2つの内訳は、棋聖戦第3局で渡辺に喫したものと、竜王戦決勝トーナメントで丸山忠久九段に敗れたものである。棋聖戦と同時進行の王位戦でも木村一基王位(当時)に2連勝し、二冠確保の橋頭堡を築いていた。この間、連戦が1度、中1日対局が2度、そしてTV棋戦収録による1日2局が一度あった。