文春オンライン

なぜ東京オリンピックは異論を封じる“暴力的手法”となってしまったのか「これで日本も終わりだなと思いました」

『亡国のオリンピック』より#1

2021/10/06

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 読書, スポーツ, 社会, 医療, 国際, 政治, 経済, 歴史

note

オリンピック強行の合理的な理由が何もない

──それにしても、これだけ問題があるオリンピックを、菅首相はどうして強行したのでしょうか。そこがよくわからない。

坂上 米紙のインタビューで「最も単純で簡単なのは中止することだが、政府の仕事は課題に取り組むことだ」と述べていますが、これは自分の気概や信念の表明に過ぎず、コロナ禍での開催について国民が納得するような説明は、これまでまったくなされていない。要するに、国民に説明できるような合理的な理由が何もないということですね。今さらやめるのが怖いというのもあると思いますが、それ以上に国民に言えないような政治的な思惑などが働いているということでしょう。

 通常だとオリンピックの開催に合わせて100カ国ほどの首脳が集まります。菅首相は、この千載一遇のチャンスも逃したくなかったのでしょう。オリンピックの主催国の首相として、一瞬であっても世界の中心に立つことができるし、各国首相との会談をやれば自分の存在感をアピールでき、政権の浮揚にもなる。直前のG7サミットで各国首脳に「開催の支持を得た」などと言って、外堀を埋めて国内の反対論を抑え込んだのと同じようなことを思い描いていたのではないでしょうか。

ADVERTISEMENT

──しかし、日本の主権という点では、大いに侵害されたところがあったわけです。それは新型コロナ対策で顕著に見られましたね。

坂上 オリンピック関係者だけ、普通はあり得ない特別扱いですね。入国後の待機日数も普通は2週間なのに、3日とか。確かにこれは日本の主権を侵しているようなものですね。今回の新型コロナ対応だけでなく、開催都市契約によってIOCは、通関の義務や知的財産権の侵犯の取り締まりの義務を開催都市と各国のオリンピック委員会、そして組織委員会に負わせています。特別扱いをさせるようになっている。