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「ステイホーム」できない人はどこへ行けばいいのか? 自宅療養の推進で明らかになった“自宅格差”の実態

『貧困パンデミック 寝ている『公助』を叩き起こす』より #1

2021/10/02
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三、経済危機の影響で生活困窮者が「自宅」を失わないための支援策が必要である

 現在、私たち生活困窮者支援の関係者が懸念しているのは、新型コロナウイルス問題を発端とした経済危機により、失業者や収入が激減する人が急増し、2008~09年の世界同時不況の時のように、安定した住まいを失う人が多数出てしまうという事態が発生することだ。

 すでに各国の株式市場が乱高下する等、世界経済への影響が深刻化しているが、国内でも観光業、飲食業、音楽、演劇、娯楽、百貨店など、人が集まることでビジネスが成り立つ業種はすでに大きな打撃を受けており、それぞれの職場で先の見えない不安が広がっている。

 国際労働機関(ILO)は3月18日、全世界で最大2470万人が失業する可能性があるとの予測を発表した。この数字は、リーマンショックを発端とする2008~09年の世界同時不況での失業者2200万人を上回っている。

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 ただ、ILOは職場の労働者保護、景気・雇用刺激策、仕事・所得支援策を3本柱とする対策を実施すれば、失業者の増加を530万人まで抑えることが可能だと指摘している。日本でも政府が大胆な対策を実行することが求められている。

「自宅を失わないための支援」と「自宅を失った人への支援」の強化を

 政府は3月19日、生活困窮者向けの支援策として、電気やガス、水道などの公共料金の支払期限を延長するなどの措置を講じるよう関係業界や自治体に要請した。国民全員に一定の現金給付をする案も検討されているという。

 こうした対策に加えて、私は「自宅を失わないための支援」と「自宅を失った人への支援」を強化する必要があると考えている。

 厚生労働省は、3月10日に「新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度における留意点について」という事務連絡を各地方自治体に発出した。

 この中で厚労省は、リーマンショック時に発出した通知を再掲し、庁内の各部局が連携しながら生活困窮者に適切な支援を実施すること、特に住まいに困窮している人にはさまざまな制度や社会資源を活用して一時的な居所の確保に努めること、福祉事務所は生活保護制度について十分な説明を行い、保護申請の意思を確認した上で、必要な人に保護を速やかに適用すること等を求めている。

 特に最後の点については、「保護の申請書類が整っていないことをもって申請を受け付けない等、法律上認められた保護の申請権が侵害されないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきであることに留意願いたい」と各自治体に「水際作戦」(生活保護を必要としている人を窓口で追い返すこと)を実施しないよう、あらためて釘を刺している。