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「ステイホーム」できない人はどこへ行けばいいのか? 自宅療養の推進で明らかになった“自宅格差”の実態

『貧困パンデミック 寝ている『公助』を叩き起こす』より #1

2021/10/02
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四、 経済危機の影響で「自宅」を失った人に対して、感染リスクを考慮した支援策を提供する必要がある

 自宅がない人、つまりホームレス状態にある人々をどうやって新型コロナウイルスから守るか、という問題は、日本ではほとんど議論されていないが、欧米では大きな課題として議論されている。

 米カリフォルニア州のニューソム知事は、3月18日、今後8週間で、州内の路上で生活する10万8千人のホームレスのうち、6万人以上が感染し、医療システムに多大な負担が生じる可能性があるとする専門家の検討結果を発表した。

 ロンドンのサディク・カーン市長は、3月21日、市内にいる路上生活者を感染から守るため、2ヶ所のホテルの部屋300室を提供するという方針を発表した。 

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 ホームレス状態にある人の感染を予防することは、人道的な課題であると同時に、公衆衛生の観点からも重要であるという認識が広がっているのだ。

 日本では幸い、欧米ほど路上生活者の数が多くない。

 厚生労働省が昨年1月に実施した概数調査では、全国で確認された「ホームレス」数は、4555人(男性4253人、女性171人、不明131人)となっており、ピーク時の2万5296人(2003年調査)の5分の1以下に減少している。

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 この概数調査は、各自治体が基本、昼間に実施している目視調査に基づくものなので、数字が小さめに出る傾向があるが、近年、生活保護などの支援策につながり、路上生活から抜け出す人が増えているのは事実である。

 ただ、厚労省は路上、公園、河川敷等、屋外で生活をしている人のみを「ホームレス」と定義しているため、ネットカフェや24時間営業の飲食店、貸倉庫、友人宅等に寝泊まりをしている人はこの調査から漏れている。

 東京都は2017年の調査で、ネットカフェ等に暮らす人が都内だけで約4千人いると推計している。全国的な調査を実施すれば、1万を超える人数が確認できるだろう。

 欧米のようにhomelessを広い意味でのホームレス状態にある人と捉えるならば、日本でも決して軽視をしてよい問題とは言えないだろう。

 厚労省は3月10日の事務連絡の中で「住まいに困窮する方への支援」を強化することを自治体に求めているが、そこで例として出されているのは「ホームレス自立支援センター」等の活用である。

 しかし、「ホームレス自立支援センター」等、住まいを失った人に役所が紹介する施設のほとんどは相部屋の環境であり、感染症対策という観点からは大きなリスクがある。

 私は東京都内で路上生活者支援の夜回りを定期的に実施しているが、先日、有楽町駅近くで出会った高齢の男性は「生活保護を受けたいが、コロナのことを考えると、(役所が紹介する)10人部屋の施設なんて、おっかなくて入れない」と話していた。