あの頃はもう、グダグダの生活で……
―― 棋士の生活、時間管理とはどんなものなんですか? 中村さんの1日の過ごし方はどんな感じなんでしょう?
中村 いやー……、23歳から完全に一人暮らしになったんですけど、もう、グダグダです(笑)。でも、今より一人暮らしを始めた頃のほうがひどかったかな。あの頃は何も予定のない日もあったので、朝10時とか11時ぐらいに起きて、なんやかんやして昼ご飯食べて、ちょっとテレビつけて、将棋の勉強して、グダグダして。
――あ、やっぱりテレビはつけるんですね。
中村 一応、流れで(笑)。将棋の勉強も普段から8時間とか頑張って集中できるわけではないですから。休みの日とかは、二度寝というか、眠くなったなと思ったら寝たり……。ひどいものですよね(笑)。1人になるとだらけちゃうのは分かっていたので、研究会の予定をたくさん入れるようにはしてました。月に二十何日とか研究会の日程を入れて、朝10時から夕方ぐらいまでやって、帰ってご飯食べて、テレビ見て、インターネットで研究したり、その日の復習をしたり。
―― 研究会って、言ってみればライバル同士アドバイスをし合うわけですよね。それって抵抗はないんですか?
中村 確かに若干あるんですけど、全部洗いざらい話す人のほうがいい情報も集まってくるものなんです。本当の本当のとっておきは言わないにしても、ある程度のとっておきは言ったほうがいい気がします。まさに「オープンソース」で、自分のものを広めていくと、いいものも自分に集まってくる。
―― 対局の前、特に今回の王座戦の前などタイトル戦を控えると、将棋に集中する時間はいつもより多めになるものですか?
中村 今回の羽生さんとの王座戦の時は他の仕事は全く入れずにやりましたね。普通の対局の時も、対局前になるとやっぱり対戦相手のことも研究しなきゃいけないし、勉強に費やす時間はかなり多くなります。タイトル戦はやっぱり1発勝負じゃなくて、今回だと5番勝負ですし、やれることが多いので、そこはかなり費やすことになりますね。それこそ本当に1日15時間ぐらいはやってたかな。
―― 15時間!
中村 それがタイトル戦が決まってから、2カ月ぐらい続きますね。
―― 全部、羽生善治研究という感じですか?
中村 そうですね。ただ、それだけではダメで、将棋全体の流行を追わなければいけません。羽生さんも流行を踏まえていろいろ戦法も変えてこられますから。それと、自分の計算スピード、読むスピードを保つために詰将棋の練習問題を1日数本解くようにして、終盤のためのトレーニングも欠かせません。あとは、先ほど言ったように生活リズムの自己管理です。