将棋棋士・中村太地新王座は“テレビっ子”だった! てれびのスキマさんによる「テレビの履歴書」インタビュー・中村太地王座編の第3回は、将棋番組裏話、乃木坂のこと、そして愛するバラエティ番組について!(全3回 #1、#2よりつづく)
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人前で話すのがそんな得意でもないのに、ニュース番組なんて
―― 中村さんは2014年にNHKのニュース番組『NEWS WEB』でコメンテーターを務められていました。棋士の方がニュース番組にレギュラー出演されるのは珍しいと思いましたが、出演の経緯はどういうものだったんですか?
中村 4年前に王座戦で羽生さんに敗れた頃、Twitterを使っていろいろ発信してたんです。「王座戦第何局が何日にあります。頑張ります」みたいなことをつぶやいてまして。で、第5局が終わって5番勝負での負けが確定した時に、ファンの人からかなりメッセージをいただいていたので、それにずっと返信してました。それをNHKの人が目にとめてくれたそうです。伝統文化の世界に身を置いていながらSNSとかデジタルのことをやっている人を、ちょうど探していたらしくて。そこに僕が引っかかったということのようです。それでコメンテーター、番組的には「ナビゲーター」と呼んでいたんですが、そのお仕事をいただきました。
―― オファーが来た時はどう思いました?
中村 さすがにちょっと悩みましたよね、僕でいいのかって。だって、一般のニュースに関してコメントなんて難しくてできないじゃないですか。無責任なことも言えませんし、生放送で失敗はできませんし。人前で話すのがそんな得意でもないのに、ましてやテレビで話すなんて、という思いは大きかったです。NHKの方には「Twitterなどで上がってくる視聴者の声を代表して専門家の人に聞くような役回りなので、大丈夫ですよ」って諭されまして……。僕はわりと保守的で、新しいことに挑戦する怖さを持っている方なんですが、この時は「せっかくの機会だし、二度とない依頼だからやってみようかな」と、そこはちょっと勇気を振り絞ってやってみた感じなんです。
―― 誰かに相談されました?
中村 先輩棋士や親には相談しました。わりと賛成してもらえました。でも、間違いなくやってよかった仕事ですね。
―― それはどういうところでよかったと思われますか?
中村 いろんなところにアンテナを張るようになって、ちょっと幅が広がったようにも思いますし、いろんな人に出会えたので、それは棋士としてよりも人間として豊かになれたかなと。ただ、毎週の深夜の放送なので、生活リズムを管理するのがけっこう大変でした。棋士は対局に合わせて、心身ともに一番いい状態を作らなければなりませんから。