ペス山さんは小学生のときからプロレス(WWEのジョン・シナなど)やメタル(METALLICAのジェイムズ・ヘットフィールドなど)が好きで、その“男らしさ”に憧れてきた。現在、男らしい見た目に近づけるための「ホルモン治療」を検討していると話す。
ただ、『女(じぶん)の体をゆるすまで』の番外編では、ヴァギナでのオナニー体験を嬉々として告白されていた。
性自認は「中性」で、見た目は「マッチョな男性」に憧れ、性的な行為では「女性器」を使う。ペス山さんが性を前向きに楽しんでいる様子が私はとても好きだったのだが、性自認と見た目、そして性行為についてすべて異なるジェンダーが選択されていることにマジョリティの筆者は想像が及ばず、混乱した。
性別欄に「どちらでもない」があると瞬時に選ぶ
「見た目が男性的になったら超安心するだろうな、という感じです。それはやっぱり、女性の体にずっと違和感がありましたから。ただヒゲがあってめっちゃマッチョみたいな男らしい表象はしたいんですけど、今さら『私は男です』とは言わないだろうなとも思ってて。かといって女とも言えないので、性別欄に『どちらでもない』があったらパッと瞬時に選ぶ感じで。もっとも居心地がいいのが、どちらでもない、という状態なんです。
この前、対談した鈴木信平(※)さんは、男性の体を持って生まれてきた方で、ホルモン療法や性器形成はせず、男性器をとることを選択したトランスジェンダーです。そういった選択を『自分自身に決着をつける行為だった』と話されていました。性器は特に男性性/女性性が象徴される部分ですから、どちらにも属さないという意味で、鈴木さんのような決着のつけ方もあると思います。
ただ私の場合は正直、性自認は中性でも、小さい頃からめちゃくちゃオナニーで女性器を使ってきているので、なくなると困る、というのが本音です」
※著書に小学館ノンフィクション大賞を受賞した『男であれず、女になれない』がある。