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 しかし、東京オリンピックでは厳しいコロナ対策が敷かれ、取材者は選手との接触を禁じられていた。それを守るために、内田は「オレは触っちゃダメなんだ」と伝え、“エア”でのゴータッチを提案した。

 このときも内田の振る舞いは話題になった。

 オリンピック期間中には、選手と気心の知れた取材陣がハイタッチを交わす場面も多く見られたが、アスリートも自分も守る内田の節度ある行動は際だっていた。

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 現役選手への気遣いは、サッカー以外の競技でも変わらない。今年4月に訪れたバスケットボールBリーグの取材では、試合前のウォーミングアップから熱心に見学していた。

 アスリートへの圧倒的なリスペクトが画面を通して視聴者に伝わるから、内田は受け入れられるのだ。

 そして内田はライト層にサッカーの魅力を伝える資質の持ち主であると同時に、サッカーファンや現役選手から見ても有無を言わせないキャリアを持っている。

 世界最高レベルのカップ戦欧州チャンピオンズリーグで、主力としてベスト4に勝ち上がった日本人は過去に内田しかいない。そして通算の出場試合数は香川に抜かれたが、出場時間数は依然として日本人トップだ。世界最高峰のレベルについて自身の経験を引き合いに語るとき、内田の右に出る者はサッカー界にはいない。

このままだとサッカー人気は落ちる?

 前述の通り9月からカタールW杯の最終予選が始まったが、実は日本のサッカー人気に暗い影を落としかねないニュースがある。フランスW杯(1998年開催)の最終予選以降ではじめて、地上波での全試合中継が行なわれないことが決まったのだ。

 日本時間のゴールデンタイムでの試合になるホームゲームはテレビ朝日系列で放送するが、アウェーゲームはDAZNの独占配信となった。

 放映権を管理するAFC(アジアサッカー連盟)が放映権料を超高額に設定したため、民放各局が手を引くしかなくなったというのがその理由とされている。

 以前ならば「絶対に負けられない戦い」として盛り上がっていたW杯のアジア予選を見る人が減ってしまったら、サッカー人気はますます落ちてしまうのではないか。サッカー関係者は一様に頭を抱えている。

 そんななかで、内田の存在は大きな希望の星になっている。テレビ朝日もDAZNも内田と縁が深いため、どちらの放送でも内田がキャスティングされる可能性は高い。そうやってコア層からライト層まで、すべてのサッカーファンに愛される内田が背負うものは大きい。