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5月のある月曜日の出来事

 試合がない日のスタジアムは、休日の昼下がりのようにまどろんでいた。天井照明はいくつもある眼を半分ほどしか開けておらず、薄暗い無人の観客席はただ沈黙していた。

 夏の気配を色濃く感じるような5月のある月曜日、ナゴヤドームには数人の選手しかいなかった。翌日からのカードで投げるピッチャーと普段ベンチを温めているバッターたち。準主役と脇役というキャストも、弛緩した空気を助長していた。

 私はいつものように、重鎮たちが陣取る一塁側ベンチから離れたあたりに居場所を定めた。グラウンドとカメラマン席を隔てている腰の高さほどのラバーフェンスにもたれ、ぼんやりと時間が過ぎるのを待っていた。

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 ゲームのない日にも新聞は刷られる。そのために私はペンとノートを持ってここにいる。ただ、末席の記者にできることはほとんどなかった。どこか遠く、別の場所で誰かが口を開き、それを誰かが記事にする。翌朝にはそれが紙面になっている。一面記事に縁のないザッカン記者である私は、ただそれを傍観するだけだった。

 グラウンドではバッティング練習が始まった。打者たちは順番に打撃ケージと呼ばれる、ネットが張られたカゴのなかで打席に立つ。そこで、打たせ屋とも言うべきバッティング投手の球を打つのだ。

 私のいる場所からは、バットを構えた打者を正面から見ることができた。いつもはカメラマン席の片隅でその他大勢に紛れ、馴染みのテレビマンらと談笑するのだが、その日はあえてひとり、そこにいた。