2021年の東京都議会議員選挙では、127議席をめぐり、271名の立候補者が思い思いの選挙戦を繰り広げた。投票率自体は過去2番目の低さとなってしまった同選挙だが、立候補者一人ひとりの選挙にかける思いは特別だ。
ここではフリーランスライターで開高健ノンフィクション賞受賞作家の畠山理仁氏による『コロナ時代の選挙漫遊記』(集英社)の一部を抜粋。都議選立候補者の多様な選挙活動の実態を紹介する。(全2回中の1回目/後編を読む)
※文中敬称略
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投票率は過去2番目の低さだった!
4年に1度の「お祭り」が終わった。
東京オリンピック・パラリンピックではない。東京都議会議員選挙だ。今回の都議選は、6月25日告示・7月4日投開票の日程で行われた。東京都知事と対等な立場で議論を戦わせる都議会議員の定数は127。その議席を決めるため、42の選挙区に271人が立候補した。
私は選挙期間中、都内各地で繰り広げられた選挙戦の現場に足を運んだ。投開票日には、多彩な候補者たちと一緒に開票速報を見守るインターネット番組を企画して配信した。
まずはすべての候補者に敬意を表し、感謝したい。当選した人も落選した人も、どこかに「公のため」という気持ちがなければ立候補できない。それぞれ表現の仕方は違っても、立候補者がいなければ選挙は成り立たない。有権者のみなさんにはこの基本を何度でも思い出してほしい。
象徴的な選挙区が小平市選挙区だ。同選挙区の定数は2だったが、2人しか立候補しなかった。
そのため、「無投票」で当選が決まった。都議選での「無投票」は、58年ぶり3例目。小平市の有権者は「投票したくても投票できませんでした!」と私に教えてくれた。
ちなみに都議選告示前の6月23日、「特定患者等の郵便等を用いて行う投票方法の特例に関する260法律」が施行された。この特例法により、新型コロナウイルス感染症で宿泊・自宅療養等をしている人のうち、一定の要件に該当する人は「特例郵便等投票」ができるようになった。万が一、新型コロナウイルス感染症にかかっても、郵便で安全に投票する権利が新たに保障されたのだ。
東京都議会議員選挙の投開票が終了した7月5日朝、複数の新聞が「自民党・公明党で過半数届かず」と伝えた。しかし、私は別の大問題に注目している。それは過去2番目の低さを記録した投票率だ。もし、私が新聞に見出しをつけるとしたら、「投票に行った有権者、過半数に届かず」だったと思う。
投票率は42.39% で、前回を8.89ポイント下回った
今回の都議選の投票率は42.39%で、前回の51.28%を8.89ポイント下回った。私は「ひとり民主主義応援団」を自称しているが、選挙の楽しさ、立候補の意味、参加することの大切さを伝えられなかった。非力な自分を恥じている。もっと多くの人が「選挙」に注目してくれるような活動を展開できていれば、こんなに低い投票率になることはなかったはずだ。