始発から終電まで、本当にその場で話を聞く
街頭演説場所で宮瀬がかけていたタスキには、前面に「立憲異端児」、背面には携帯電話の番号が大きくプリントされていた。なにかのセールスマンかと思うような不思議なタスキで政党の色を感じさせない。本人の色が強い。だが、もちろんこんな政党公認候補がいてもいい。
私が声をかけると、宮瀬はあらためて駅前相談会の説明をしてくれた。
「始発から終電までぶっ通しでやるのは、みなさん都合のいい時間が違うからです。朝早い人もいれば夜遅い人もいます。私が駅前にずっといれば、みなさんの都合のいい時間に相談できる。始発から終電までの駅前相談会を真似する人はけっこういますが、他の人は昼間の5時間は家に帰って寝たりしているんですよね。それじゃあ意味がない。私は本当に始発から終電までいます。丸イスを2つ置いて、ご飯もその場所で食べます。席を外すとしても10分まで。ゴミ拾いかトイレのときだけです」
宮瀬はそう言うと、これまで行ってきた駅前相談会の写真を見せてくれた。たしかに駅前に丸イスを2つ置き、そこで食事を摂る宮瀬の姿が写っていた。
ところで、きのう相談に来たという愛知県の人はどうなったのだろうか。
「きのうの相談者は愛知県の人なので票にはつながりませんが、命に関わる問題です。都民じゃないからと放っておくわけにはいきません。だから今日の昼間は選挙運動ではなく、その人と一緒に関係各所に連絡を取りました。その結果、就労支援施設につなぐことができました」
それはよかった、さぞかしその方も安心したでしょうねと言うと、宮瀬の口から驚くべき言葉が返ってきた。
「彼はいま、あそこでビラ配りを手伝ってくれています」
なんと! 私はすぐに男性にも話を聞いた。どういう経緯で相談したんですか?
「実は東京でしばらく働いていたんですがホームレス状態になってしまい、駅のトイレで寝泊まりするような生活を続けていたんです。駅だから、選挙中はいろんな政党の候補者が来て演説しますよね。誰か助けてくれそうな人はいないかと、いろんな政党、いろんな候補の演説を聞いて品定めしていました。でも、なかなか相談したいと思える人がいなかった。そこに宮瀬さんが来た。演説も何度か聞いた上で、この人なら、と思って相談したんです。そうしたら、すぐに生活保護が受けられる、就労支援にもつなげられると言ってくれて、本当に助かりました」