選挙は誰が出てもいい。立候補した人にはそれぞれ思いがある。現場に行けば、そこでしかわからない感動もある。私は「選挙は民主主義のお祭りだ」と伝えたくて、とくに多くのメディアからは注目されない候補者の取材に力を入れてきた。彼・彼女たちの戦いは、一部の政治エリートよりも、私たち有権者に近いと思ってきたからだ。
私は今回も、自分で政党や政治団体を立ち上げた人、生活保護を受けながら立候補した人、街頭演説を一切せずにゴミ拾いを続けた人、政党公認候補なのに選挙中に始発から終電まで駅前で困りごと相談をした人など、多様な候補者に出会ってきた。
その中には、当選した人もいれば、落選した人もいる。得票数が少なかったために60万円の供託金を没収された人もいる。
それでも「ゼロ票」という候補者は一人も出なかった。
多くの人から責められても、支持する人は必ずどこかにいる。だから選挙に立候補したことを後悔する人はほとんどいない。必ず学びや得るものがあるからだ。すべての候補者たちは、選挙の素晴らしさを「誰か」に伝える大仕事を成し遂げている。
愛知県民のために行動していた現職候補がいた!
私は無所属の候補者しか取材していないと誤解されることが多い。しかし、実際には政党の公認候補者も数多く取材している。その中にはユニークな活動をしている人もいる。有権者と同じ感覚を持っている人もいる。「政党公認」だからと十把一絡げにすることはできない。
そんな候補者の一人が、板橋区選挙区から立候補した現職・宮瀬英治(みやせえいじ)だった。
選挙期間中の7月1日、私が都議選に立候補した人たちのツイッターを幅広くチェックしていると、ひときわ目を引く宮瀬の書き込みを見つけた。
「71回目の地下鉄成増駅での始発から終電まで駅前相談会が終了。選挙区関係なく対応。特に愛知県の方と夜に1時間話しました。選挙中ですが明日昼には事務所で再び同じ方と会います。命に関わることなので。自分の選挙はいったん横におきます。すみません」
なんだ、これは?
都議を2期8年務めた宮瀬のツイッターを遡ると、1つ前に「駅前相談会」の説明があった。宮瀬は初当選後から駅前で困りごとの相談会を開いてきたのだという。相談時間は「始発から終電まで」。ずっと駅前に座って相談者を待つ駅前相談会は、今回で71回目というから驚いた。そんな宮瀬に興味を持った私は、さっそく板橋区内に話を聞きに行った。