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諦めなければその時はやってくる…フジテレビを辞めて「オリックス優勝」を妄想し続けてきたアナウンサーの話

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/10/21

※今回は今まで話していなかった僕のフジテレビ退社時の事、野球実況の事を書かせて頂きます。アナウンサー田中大貴ではなく、イチ野球ファン田中大貴として読んで下さいね。嘘のようで本当の話。最後まで読んでください。

今でも忘れられないフジテレビ退社時のインタビュー

「オリックスの実況したくてフジテレビを辞めたのはホンマですか??」

 これまで何人の方に言われたか……もう数え切れまへん。

「それがホンマやったら田中さん、めちゃくちゃ良い人ですね」

 こも何人の方に言われたことか……数え切れまへん。

 今でもそうですが、仕事では常にフラットに、常にバランスよく、ニュートラルに。

 選手、ファン、視聴者ファーストで。

 ただ、プライベートは故郷に思いを馳せ、オリックスをこっそりと心の中で熱く応援してきたフジテレビ時代の僕。

 2018年、退社時に新た一歩を踏み出す僕にスポーツ系メディアの人がインタビューに集まってくれました。

「やはりスポーツの仕事を中心に活動されますか?」
「テレビだけではなくインターネット配信のメディアにも興味を持たれているんですか?」
「30代、若くして退社した一番の理由は何ですか?」
「フリーアナウンサーとして目指す場所は?」

 3年前の夏、矢継ぎ早に色んな質問が飛んできました。それぞれの質問に丁寧に答えていた僕。

 そして、スポーツ新聞の記者の皆さんから飛んできた質問。

「フジテレビ時代はヤクルト中心でしたが、やはり関西出身として地元・阪神タイガースの実況もかなり興味は持たれていますか?」

「うーん、実はオリックスファンでして……グリーンスタジアムでオリックスの実況を担当してみたくて……」

 目の前にいる記者の皆さんはひっくり返っていた。

 “田中アナ、阪神戦実況デビューへ、フリー挑戦”

 こんな見出しを考えていたであろう記者の皆さんはまさかの返答に大困惑。

 あの顔は今でも忘れられへん……もう一回聞かれました。「ホンマにオリックスファンなんですか?」と。記者の皆さんの顔に「うそやん(汗)」って書いてあった(笑)。

 次の日の新聞は“オリックス実況を夢見てフリーで再出発”という見出しは大きくは踊らず、ほとんどの記者がオリックスのことは詳しく書いてくれへんかった(涙)。いくつかのメディアは逆に面白がって少し書いてくれたけど(笑)。

 言われましたわ、当時、周りの皆さんこんなふうに(笑)。

「オリックス戦の実況しても日本シリーズもクライマックスシリーズも出る日は来るの? 来ないんじゃない? 大貴、大丈夫か??」

 でも、皆さん、来ましたよ。その年が、その日が。諦めず、信じている者だけが達成できる……この言葉を日本を代表するレジェンドアスリートの皆さんからインタビューで僕は何度も聞いてきました。この言葉を信じてきました。

 だから疑うことなく信念を持って妄想してきました。オリックス戦の実況フレーズを。いつかその日が来ると思って、信じ続けてきました。