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歌詞、振り付けを自ら考えさせる…オーディション番組『ガルプラ』に見る、K-POPアイドルが「大量生産型」を脱せたワケ

2021/10/01

「傷ついた少女の復讐物語」を率いた日本人メンバー

 まず3人グループにおいて圧倒的な力を見せつけたのは、ヴォーカルポジションのITZY「Mafia In the morning」チームだった。ここでリーダーとキリングパートを務めたのは、JYPエンターテインメントの元練習生で、ITZYのメンバー候補でもあった坂本舞白だ。NiziUのリーダー・マコからも慕われていたという彼女は、自分に訪れるかもしれなかった未来の楽曲をあえて選んだ。

 そのコンセプトは、「悪い男に出会って傷ついた3人の少女の復讐物語」。もともとのガールクラッシュをさらに強めたその内容は、3人の挑発的な表情の調整も含め完璧に近いものだった。この成果を導いたのは、やはりリーダーを務めた坂本によるところが大きい。

サムネイル画像では、中央にいる坂本舞白


 6人グループで勝者となったのは、イ・ソニ「縁(Fate)」をパフォーマンスしたダンスポジションのチームだ。

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 この曲は、2005年に公開の李氏朝鮮時代を描いた大ヒット映画『王の男』のテーマソングだ。まだK-POPという言葉がなかった時代に、朝鮮の伝統楽器を取り入れたひとむかし前の歌謡曲だ。そうした“古臭い曲”だからこそ、能力の高い参加者たちがどう解釈するかが見どころだった。

 6人はアイディアを出し合い、原曲のテーマ「縁(Fate)」を自分たちの関係に置き換えて表現した。コンセプトは「約束して、この瞬間が終わってもまた会える日」。

 指切りをしたり、手をつないで離れたり、あるいは手を伸ばしてお互いを求めたり──それは全員がデビューすることはないだろう未来を踏まえての表現だ。バレエシューズを履き、ほぼモダンバレエと言えるその振り付けは、リーダーを務めた四川音楽大学出身のシェン・シャオティンによるものだと思われる。

 審査するK-POPマスターのソンミは「圧巻のステージ。シーンが変わっていく様子は映画のようだった」と絶賛した。舞台演劇のようなそのパフォーマンスは、その解釈も含め非の打ちどころがないレベルだった。

サムネイル画像では、前列右にいるシェン・シャオティン

最年長・中国人メンバーの「焦り」が引き起こした対立

 9人グループで勝利したのは、イギリスのガールズグループであるリトル・ミックスの「Salute」のチームだ。2013年に発表された原曲は、戦う女性たちを描いた強めの内容だ。9人のパフォーマンスは、フォーメーションや振り付けも含め、本家を上回る出来だった。

サムネイル画像では、中央にいるツァイ・ビーン


 しかし、このグループはチームワークにおいて大きな失敗をした。リーダーとキリングパートをともに務めたのは参加者の最年長であるツァイ・ビーンだったが、番組では彼女の不安定さが描かれた。

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