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キムタクと喧嘩する女優はノッている…見過ごされてきた、木村拓哉の意外すぎる“本質”

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2021/10/01
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 長澤まさみは去年、『MOTHER』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。主演作である『コンフィデンスマンJP』は映画版も大ヒットを記録し、中国映画の『唐人街探偵 東京MISSION』では言わば日本代表の切り札としてヒロイン役を務めるトップ女優だ。

 その折り紙つきの実力で見事に木村拓哉のダンスパートナーを務めるヒロインを見ながら、でもやはり、木村拓哉の相手役を演じてきた過去の名女優たちと同じように、長澤まさみが映画の中である種のリズムに乗り、彼女の演技がジャズの演奏のように自由にスウィングしているのを感じる。

 それは木村拓哉の演技の本質が、自分がマイクを握りしめるボーカルではなく、ヒロインを歌わせるためにリズムを作り出す伴奏だからだ。

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 ほとんどの作品で主演俳優にクレジットされ、もう30年もその名がスーパースターの代名詞になっている木村拓哉を「名バイプレイヤー」と呼ぶのは、あるいは間違っているのかもしれない。だが、作品の視聴率や成績を常に「主演・木村拓哉」という看板で背負い、世間からはワンマンのスタープレイヤーのように見られながら、彼の演技の本質は相手役を生かすコミュニケーションのリズム、他人への繊細な感性にあると思う。

映画『MOTHER マザー』完成披露舞台挨拶 ©文藝春秋

 記録上はエースピッチャーとして試合の勝敗を背負いながら、実際の試合の中で彼がつとめるポジションはむしろキャッチャーであり、最終的には常にヒロインのセリフがウイニングショットとなって試合を決めているのだ。

 長澤まさみ演じるヒロインが決定的な一歩を踏み出す『マスカレード・ナイト』の美しいクライマックスを見ながら、『ロンバケ』も『HERO』も『ビューティフルライフ』も本当はラブストーリーではなく、それぞれの時代を生きた男の子と女の子のバディフィルム、相棒物語だったのかもしれないと考えていた。

YOUの代わりなんていくらでもいるんだよ!

 TOKYO FMで長く続く木村拓哉のラジオ番組『Flow』の公式サイトには、過去の放送の書き起こしがアーカイブとして残っている。2018年9月、二宮和也をゲストに迎えた放送のアーカイブの中で、木村拓哉が故・ジャニー喜多川氏に触れた言葉が今も読める。

二宮:あ! そうかぁ……。でも、一昔前に「お前の代わりなんていくらでもいる!」って言われてましたけどね。

木村:それ「YOU」でしょ? お前じゃなくて(笑)。