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二宮:そうそう(笑)。

木村:俺も言われたことある。やっぱり、言いたくなっちゃうんじゃない。レッドゾーンに入るとやっぱり言っちゃうんだよ。

「YOUの代わりなんていくらでもいるんだよ! もうめちゃくちゃだよ!」って。

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(中略)

木村:もう、しょっちゅうドッカンしてたよ。うちらって後ろで踊ることがあったじゃん。後ろで踊るっていうことの責任の無さが、たぶん彼を激昂させたと思うんだけど。

 アーカイブの保持期限からすると、このHPの書き起こしはあと1ヶ月ほどで消えてしまうのかもしれない。明白に名指しこそしていないが、それがジャニー喜多川氏の口癖を指していることは誰にでもわかる。

 ファンも所属タレントも「ジャニーさん」と敬称をつけて呼び、多くの芸能メディアがその名を書くことも憚ったその人物を「彼」と呼ぶ木村拓哉の言葉は、2018年9月の時点でジャニー喜多川氏はまだ存命だったにもかかわらず、まるでついに打ち解けなかった厳格な父親の思い出を語るような不思議な距離感とともに心に残った。

SMAP ©文藝春秋

「帝国」の支配が崩れてきた今、木村拓哉を再評価する意味

 SMAPというグループの国民的な成功は、ジャニーズ事務所と「彼」を芸能界全体に影響力を持つ帝国の王に押し上げた。そして、自分たちが押し上げた帝王の抑圧の下でグループが分解するという皮肉な運命の下に木村拓哉は生きてきた。

 2021年現在、そのジャニー喜多川も、彼の姉であるメリー喜多川もすでに世を去った。2019年、ジャニー喜多川の死後に公正取引委員会は元SMAP(現・新しい地図)の3人をテレビに出演させないことについての「注意」を行い、草彅剛、香取慎吾、稲垣吾郎の三人は俳優として一気に活躍の場を広げ、高い評価を得た。

 中居正広をはじめ、ジャニーズ事務所を退所するメンバーはその後も続いている。かつて「帝国」と呼ばれ芸能界を支配したその圧倒的な力関係は変わりつつある。

 だがそうした「帝王の死」の後で、これまで嵐のような賞賛と反感の風に吹かれてきた木村拓哉という俳優をようやくありのままに、正当に評価しうる時が来たのではないかと思う。

 この原稿を書くにあたり『マスカレード・ナイト』関連の彼のインタビューを読み漁っていて圧倒されたのは、映画一本にいったい何十の取材を受けているのかというその膨大な量もさることながら、そのひとつとして「流した」インタビューがないことである。